膵管拡張から見つかったステージ0膵がん(膵上皮内がん)|超音波内視鏡(EUS)での早期発見|みゆき消化器内視鏡クリニック|多摩市永山の消化器内科・内視鏡検査

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MRIと超音波内視鏡による膵がんドック

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膵管拡張から見つかったステージ0膵がん(膵上皮内がん)|超音波内視鏡(EUS)での早期発見

膵管拡張から見つかったステージ0膵がん(膵上皮内がん)|超音波内視鏡(EUS)での早期発見|みゆき消化器内視鏡クリニック|多摩市永山の消化器内科・内視鏡検査

2025年9月14日

膵上皮内がん(ステージ0膵がん)は、画像検査でも見つかりにくい非常に早期の膵がんです。
本症例では、膵管拡張をきっかけに超音波内視鏡(EUS)で異常を検出し、早期発見につながりました。
膵嚢胞(IPMN)や膵管拡張を指摘された方は、見逃さないための精密検査が重要です。

はじめに

膵がんは、消化器がんの中でも最も予後が厳しい疾患の一つです。 国立がん研究センターの報告では、5年相対生存率はわずか8.5%とされており、他の消化器がんと比べても低い水準にあります。

消化器がんの5年相対生存率の比較を示した図

図:膵がんは他の消化器がんと比べても5年相対生存率が低いことが知られています。

その大きな理由は、早期発見が極めて難しい点にあります。 膵臓は体の奥深くに位置し、初期にはほとんど症状がないため、気づいた時には進行しているケースが少なくありません。

その大きな理由は、早期発見が極めて難しい点にあります。 膵臓は体の奥深くに位置し、初期にはほとんど症状がないため、気づいた時にはすでに進行しているケースが少なくありません。 一方で近年は、医療技術の進歩により状況は変わりつつあります。 超音波内視鏡(EUS)などの高精度な検査により、膵臓のわずかな変化を捉えることが可能になってきました。 特に、膵嚢胞(IPMN)や膵管拡張といった膵がんに関連する異常を丁寧に評価することで、従来は見つけることが難しかった早期膵がんの発見につながるケースもあります。

今回ご紹介する症例も、こうした小さな変化をきっかけに早期発見につながったケースです。

 症例

80代女性の方です。

9年前より他院にて膵嚢胞の定期的な経過観察を受けておられました。 最近の画像検査(MRI・CT)で膵嚢胞の増大と膵管拡張が認められたため、精密検査目的に当院へご紹介いただきました。

前医で施行された腹部MRIでは、膵体部に嚢胞性病変を認め、その近傍の主膵管に狭窄を認めました。 さらに、狭窄部より尾側の主膵管は数珠状に拡張していました。

MRIで認められた膵体部嚢胞と主膵管狭窄および尾側膵管の数珠状拡張

MRI(MRCP)画像:膵体部に嚢胞性病変を認め、主膵管の狭窄と尾側膵管の数珠状拡張を認めます。(平賀診療所 秋山 新二郎先生ご提供)

造影腹部CTでも膵嚢胞および主膵管拡張を認めました。 また、主膵管が狭窄している部位では、周囲の膵実質がやや萎縮しているように見えました。

CTで認められた膵嚢胞と主膵管拡張および膵実質の萎縮

造影CT:膵嚢胞と主膵管拡張を認め、狭窄部周囲の膵実質に軽度の萎縮を認めます。(平賀診療所 秋山 新二郎先生ご提供)

なお、腹部MRIおよびCTでは、膵嚢胞以外に明らかな腫瘤性病変は認めませんでした。

当院で施行した超音波内視鏡(EUS)では、MRI・CTと同様に膵体部に嚢胞性病変を認め、 その近傍の主膵管に狭窄を認めました。さらに、狭窄部より尾側の主膵管は拡張していました。

狭窄部周囲を詳細に観察したところ、約5mm大の低エコー領域を認めました。 この領域は境界が比較的明瞭であり、膵腫瘍の存在が疑われました。

EUSで確認された膵管狭窄部近傍の低エコー領域(約5mm)

超音波内視鏡(EUS):主膵管狭窄部近傍に約5mmの低エコー領域を認め、腫瘍性病変が疑われました。

このように、CTやMRIでは明らかな腫瘤として描出されない場合でも、超音波内視鏡(EUS)では微小な病変を捉えられることがあります。

後日、膵腫瘍が疑われた病変に対して、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を施行しましたが、細胞診の結果は陰性であり、明らかな悪性所見は認めませんでした。

しかし、主膵管狭窄の原因として悪性疾患の可能性を完全に否定することは困難であり、追加検査として連続膵液細胞診(SPACE)を提案しました。

一方で患者さんご本人は、「手術による確定診断と根治的治療を希望する」との強いご意向を示されました。 そのため、日本医科大学多摩永山病院外科へ紹介し、外科的切除を施行していただきました。

切除標本の病理組織学的検査の結果、膵上皮内がん(CIS:carcinoma in situ)と診断されました。 これは膵がんのステージ0に相当し、極めて早期の段階での発見となりました。

本症例のように、画像検査や細胞診のみでは診断が難しい場合でも、膵管狭窄や超音波内視鏡(EUS)で認められる狭窄部周囲の低エコー領域などを総合的に評価することが、早期発見につながる場合があります。こうした所見がある場合には、EUSによる精密検査が重要となります。

▶️ 膵管拡張について詳しく知りたい方はこちらの解説記事をご覧ください

膵上皮内がん(ステージ0膵がん)とは

膵がんの約90%は、膵臓の中を通る管(膵管)の内側を覆う上皮細胞から発生します。 病気が進行すると、がん細胞は膵管の外へ広がり(これを「浸潤」といいます)、膵臓の中に腫瘍(しこり)を形成します。これが一般的にいわれる「膵がん(浸潤がん)」です。

膵上皮内がんと浸潤性膵がんの違いを示した模式図

図:膵上皮内がん(膵管内にとどまる)と浸潤性膵がん(膵管外へ広がる)の違い

一方で、膵上皮内がん(carcinoma in situ:CIS)とは、がん細胞が膵管の内側にとどまり、まだ外へ広がっていないごく早期の膵がんを指します。 いわば膵がんの“前段階”や“ステージ0”と考えることができ、適切な治療を行えば根治が期待できる状態です。

日本膵臓学会の膵がん登録によると、ステージ0膵がんの5年生存率は85.8%と報告されており、進行した膵がんと比べて良好な予後が期待されます。 しかし、初期にはほとんど症状がないため、発見が難しいという特徴があります。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 膵上皮内がんの症状はありますか?

膵上皮内がんは、膵がんの最も初期の段階であり、がん細胞は膵管の内側にとどまっています。 この段階では症状が出ることはほとんどなく、ご自身で気づくことは非常に難しいのが特徴です。

膵がんが進行すると、腹痛や背部痛、黄疸、体重減少、糖尿病の悪化などの症状が現れますが、膵上皮内がんではこうした症状はみられません。

つまり、症状がないうちに見つけられるかどうかが重要になります。

Q. 膵上皮内がんはどのように見つかるのですか?

膵上皮内がんは自覚症状がないため、多くは偶然に発見されます。 健診の腹部超音波検査で膵臓の異常を指摘されたり、CTやMRIで膵管拡張や嚢胞が見つかったりすることがきっかけとなります。

また、糖尿病の新規発症や急な悪化が手がかりとなることもあります。

さらに、本症例のように膵嚢胞(IPMN)の経過観察中に診断されるケースもあります。

Q. 膵上皮内がんはどのように診断するのですか?

  • ✔ 膵管狭窄(膵管が細くなる)
  • ✔ 膵管拡張(狭窄の奥の膵管が太くなる)
  • ✔ 膵臓実質の萎縮(膵臓が部分的にやせる)

膵上皮内がん(ステージ0)は早期のがんですが、確実に治すためには外科的切除が必要です。

■ 主な手術方法

  • 膵頭部:膵頭十二指腸切除術
  • 膵体尾部:膵体尾部切除術
  • 膵中央:膵中央切除術

近年では腹腔鏡手術やロボット支援手術も導入されており、体への負担を抑えつつ安全性の高い治療が行われています。

この症例は、特別なケースではありません

今回のような「ステージ0の膵がん」は、症状がほとんどない状態で見つかります。

つまり、次のような方に当てはまる可能性があります。

  • 健康診断で膵嚢胞や膵管拡張を指摘された
  • 腹部エコーで膵臓が見えにくいと言われた
  • IPMNの経過観察中である
  • 家族に膵がんの方がいる

膵臓が心配な方、IPMNや膵嚢胞を指摘された方へ

健診で膵嚢胞やIPMNを指摘された方、
経過観察中で詳しい検査が必要か迷っている方はご相談ください。

当院では、超音波内視鏡(EUS)による精密検査や、膵がんドックを行っています。

超音波内視鏡(EUS)年間430件(2025年)・累計2000件以上の検査経験をもとに診療を行っています。

参考文献

がん情報サービス ganjoho.jp

日本膵臓学会、膵癌診療ガイドライン改訂委員会編:膵癌診療ガイドライン.金原出版,東京,2022.

日本膵臓学会編:膵癌取扱い規約第 7 版.金原出版,東京,2016.

Egawa S, et al. Pancreas. 2012;41:985-92.

Kanno A, et al:Pancreatology.2018;18:61-67.

羽場 真、他.消化器内視鏡 2024;36:721-25.

注:「今月の1例」は、今月に内視鏡を行なった症例とは限りません。過去の症例も含まれます。

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