2026年3月28日
膵臓がんは初期症状に乏しく、発見が遅れやすいがんです。
しかし近年では、わずかな変化から早期に発見できるケースも増えてきています。
はじめに
「膵がんは見つかったときには進行していることが多い」
「診断された時にはすでに手遅れなのではないか」
そのようなイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。
確かに膵がんは、発見時に進行していることが多いがんです。
しかし近年では、健診や人間ドックの普及、画像検査の進歩により、
👉 比較的早い段階で発見され、長期予後が期待できる症例も増えてきています。
膵がんは「沈黙のがん」と呼ばれ、
👉 初期にはほとんど自覚症状がありません。
しかし、まったくサインがないわけではありません。
👉 ごくわずかな変化を見逃さず、膵がんの可能性を念頭に置いて評価することが重要です。
では、どのような変化に注目すればいいのでしょうか。
本記事では、膵がんの初期症状について専門医が解説します。
膵がんの初期症状はほとんどない
膵がんの初期では、
- ✔ 痛みがない
- ✔ 食欲も変わらない
- ✔ 日常生活にも支障がない
👉 ということがほとんどです。
実際に、日本の複数の専門施設から集められたステージ0・1の早期膵がん200例を検討した報告では、
👉 約4分の3(150/200例)が無症状でした。
このように、
👉 膵がんは症状から気づくことが非常に難しいがんです。
だからこそ、症状だけでなく、画像検査による評価が重要になります。
症状があった場合でも…
また前述の報告では、症状があったのは全体の約25%ですが、
その内容は以下の通りです。
- 腹痛:約18%(36/200例)
- 背中の痛み:約6%(13/200例)
- 吐き気:約2%(4/200例)
👉 いずれも頻度は高くなく、日常的にもみられる症状です。
👉 つまり、症状だけで膵がんに気づくことは非常に難しいといえます。
ただし、注意すべき“サイン”はある
一方で、完全に無症状というわけではなく、
👉 「見逃されやすい変化」として現れることがあります。
① みぞおちや背中の違和感
膵臓は胃の裏側、背中に近い位置にあるため、みぞおちや背中の違和感として現れることがあります。
はっきりした痛みではなく、
- ✔ 重い感じ
- ✔ 鈍い違和感
👉 といった軽い症状として現れることがあります。
② 血糖値の上昇・糖尿病の悪化
膵臓は、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを分泌する臓器です。
そのため、膵臓に異常が起こると、
- 👉 急に血糖値が上がる
- 👉 糖尿病が悪化する
ことがあります。
👉 このような変化がみられた場合、膵臓の異常が関係していることがあります。
👉 特に、中高年で新たに糖尿病を指摘された場合や、急に悪化した場合は注意が必要です。
👉 このような変化がみられた場合、膵臓の異常が関係していることがあります。
③ 健診での異常
膵管拡張とは、膵液の流れが妨げられることで膵管が太くなった状態です。
実は最も多いのがこれです👇
- ✔ 膵管拡張
- ✔ 膵嚢胞(IPMN)
- ✔ CA19-9の上昇
👉 無症状のまま見つかるケースが多いのが特徴です。
👉 以上のような変化をきっかけに、精密検査につながることも少なくありません。
見逃したくない方へ
膵がんは、症状が出る前の段階で見つかることもあります。
健診で異常を指摘された方や、不安がある方は、
より詳しい検査をご検討ください。
MRI(MRCP)と超音波内視鏡(EUS)を組み合わせることで、より精度の高い評価につながります。
膵がんドックについて詳しく見るでは、どのように詳しく評価するのでしょうか
膵臓を詳しく調べるために重要なのが、
👉 超音波内視鏡(EUS)です。
EUSとは
超音波内視鏡(EUS)は、胃や十二指腸の中から膵臓を近くで観察できる検査です。体の外から行う腹部エコーでは見えにくい小さな変化も、より詳しく評価できます。
EUSは、胃や十二指腸の中から超音波で膵臓を観察する検査です。
👉 体の外からではなく、膵臓のすぐ近くから観察できるのが特徴です。
そのため、
- ✔ 小さな腫瘍
- ✔ 膵管のわずかな変化
- ✔ 膵嚢胞の内部構造
- など、
👉 非常に詳細に評価することができます。
超音波内視鏡(EUS)についてはこちらで詳しく解説しています。
腹部エコー(超音波)との違い
腹部エコー(超音波検査)は、健診や人間ドックでも広く行われている膵臓の画像検査です。。
体への負担が少なく、簡便に実施できるという利点がある一方で、膵臓が十分に描出できない場合があるという欠点があります。
その主な理由は、皮下脂肪や内臓脂肪、さらに胃や腸内のガスの影響を受けやすいためです。
一方、超音波内視鏡(EUS)は、胃や十二指腸の内側から膵臓をすぐ近くで観察できる検査です。
そのため、脂肪やガスの影響を受けにくく、膵臓をより詳細に評価することが可能です。
腹部エコーで膵臓が見えにくい理由や、超音波内視鏡(EUS)の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
CT、MRIとの違い
CTとMRIは、膵臓の重要な検査ですが、
👉 数mmレベルの小さな病変は見つけにくいことがあります。
一方でEUSは、
👉 より近い距離から観察することで、微細な変化を捉えることが可能です。
CTやMRIと超音波内視鏡(EUS)の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
検査を組み合わせることが重要
ここまで見てきたように、
・腹部エコー
・CT・MRI
・超音波内視鏡(EUS)
それぞれの検査には、得意・不得意があります。
👉 一つの検査だけで判断するのではなく、組み合わせて評価することが重要です。
特に、
👉 膵管拡張や膵嚢胞(IPMN)などの異常がある場合には、EUSによる詳細な評価が重要になります。
膵管拡張や膵嚢胞(IPMN)について詳しく知りたい方は、 膵管拡張の解説記事 や IPMNの基礎記事 もご覧ください。
早期発見につながるポイント
膵がんは、
👉 症状が出る前の段階で見つけられるかどうかが非常に重要です。
そのためには、
- わずかな異常を見逃さないこと
- 必要に応じて精密検査を行うこと
が大切になります。
このような方は一度ご相談ください
- 健診で膵管拡張を指摘された
- 膵嚢胞(IPMN)といわれている
- 血糖値の急な上昇や糖尿病の悪化がある
- 原因不明の腹部・背部の違和感がある
これらの変化がある場合、膵臓の精密検査が必要となることがあります。
まとめ
- ✔ 膵がんは初期にはほとんど自覚症状がありません
- ✔ 症状だけで気づくことは非常に難しいがんです
- ✔ 膵管拡張や膵嚢胞、血糖値の変化などが手がかりになります
- ✔ CTやMRIで判断が難しい場合もあります
- ✔ 早期発見には超音波内視鏡(EUS)による評価が重要です
よくあるご質問(FAQ)
Q. 膵がんの初期症状はありますか?
A. 多くの場合、初期には自覚症状がほとんどありません。そのため、症状だけで気づくことは難しく、健診や画像検査が重要になります。
Q. 背中の痛みは膵がんのサインですか?
A. 背中の痛みが膵がんによるものである場合もありますが、頻度は高くありません。日常的にもみられる症状のため、単独で判断することは難しいです。
Q. どのような人が検査を受けた方がよいですか?
A. 健診で膵管拡張や膵嚢胞(IPMN)を指摘された方、糖尿病の新規発症や急な悪化がある方は、精密検査を検討することが重要です。
Q. 超音波内視鏡(EUS)はなぜ必要ですか?
A. EUSは膵臓を近くから観察できるため、CTやMRIでは見つけにくい小さな変化も評価することが可能です。早期膵がんの診断において重要な検査の一つです。
膵がんの早期発見が気になる方へ
健診で膵管拡張や膵嚢胞を指摘された方、
症状はないものの不安がある方はご相談ください。
膵がんは初期には症状がほとんどないため、
画像検査による早期評価が重要です。
当院では、超音波内視鏡(EUS)による精密検査や、膵がんドックを行っています。
超音波内視鏡(EUS)年間430件(2025年)・累計2000件以上の検査経験をもとに診療を行っています。
参考文献
Kanno A, et al. Pancreatology.2018;18:61-67.