2026年5月18日
膵管拡張をきっかけにMRIと超音波内視鏡(EUS)で精査し、膵がんが診断された症例を紹介します。健診や画像検査で膵管拡張を指摘された方は、放置せず専門的な評価が大切です。
症例
症例:70代男性の方です。
1週間ほど続く上腹部痛を主訴に、当院を受診されました。
血液検査では、膵臓の炎症を反映する膵酵素であるアミラーゼ、リパーゼが高値を示していました。
まず胃カメラを行いましたが、胃ポリープを認めるのみで、上腹部痛の原因となるような明らかな病変は認めませんでした。
そのため、膵臓や胆道系の病気を疑い、腹部MRIを行いました。
MRI所見
MRIでは、主膵管が全長にわたって拡張していました。
また、膵管の出口に近い部分、つまり十二指腸側で膵管が途絶しているように見えました。
膵管拡張について詳しく知りたい方は、 膵管拡張とは?原因・膵がんとの関係を専門医が解説 もご参照ください。
放射線科医による読影レポートでは、
十二指腸憩室による主膵管の圧排疑い
と記載されていました。
十二指腸憩室とは、十二指腸の壁の一部が外側にふくらんだ袋状の構造です。 場所によっては胆管や膵管の近くに存在し、画像上、膵管に影響しているように見えることがあります。
しかし、膵管拡張を認める場合には、憩室による圧排だけでなく、膵腫瘍によって膵管が狭くなっている可能性も考える必要があります。 そこで、より詳しく膵臓を観察するために、超音波内視鏡検査(EUS)を行いました。
超音波内視鏡(EUS)所見
EUSでは、MRIと同様に主膵管の拡張を認めました。
さらに詳しく観察すると、膵頭部に約25mm大の腫瘤を認めました。
この腫瘤によって主膵管が狭くなり、その上流の膵管が拡張している状態と考えられました。
MRIでは、膵管の途絶や拡張は確認できましたが、原因となる腫瘤の評価には限界がありました。 一方でEUSでは、胃や十二指腸のすぐ近くから膵臓を高い解像度で観察できるため、膵臓内部の小さな病変を詳しく評価することができます。
EUSとMRI・CTの違いについて詳しく知りたい方は、 超音波内視鏡(EUS)とは?MRIやCTと何が違うの? をご覧ください。
EUS-FNAによる診断
後日、当院でEUSガイド下穿刺吸引法を行いました。
これは、超音波内視鏡で腫瘤を確認しながら、細い針で組織を採取する検査です。
当院で行っている超音波内視鏡(EUS)検査については、 超音波内視鏡(EUS)検査の詳しい説明 もご参照ください。
採取した組織を病理検査で調べた結果、未分化型膵がんの中でも 破骨細胞型と呼ばれるタイプが疑われました。
膵がんでは、画像検査だけでは腫瘍の種類まで正確に判断することは困難です。 EUS-FNAによって術前に組織を採取することで、膵がんの有無だけでなく、組織型まで把握できる場合があります。
今回の症例では、術前に未分化型膵がん(破骨細胞型)が疑われたことが、紹介先の大学病院での治療方針検討に役立ちました。 その結果、術前化学療法は行わず、手術を先行する方針となりました。
手術後の最終病理診断でも、未分化型膵がん(破骨細胞型)という結果でした。
膵管拡張は、膵がん発見の重要なサインになることがあります
膵管拡張は、健診の腹部エコーやCT、MRIなどで偶然指摘されることがあります。
原因としては、加齢変化や慢性膵炎、膵石、十二指腸憩室による圧排など、良性の病気もあります。 一方で、今回のように膵腫瘍によって膵管が狭くなり、その上流の膵管が拡張することもあります。
膵管拡張について詳しく知りたい方は、 膵管拡張とは?原因・膵がんとの関係を専門医が解説 もご参照ください。
膵管拡張で特に注意したいサイン
✔ 膵管が急に拡張している
✔ 膵管が途中で途絶している
✔ アミラーゼ・リパーゼなどの膵酵素が高い
✔ 腫瘍マーカー(CA19-9)高値を指摘されている
✔ 腹痛や背中の痛みがある
✔ 体重減少がある
✔ 糖尿病が新たに出てきた、または急に悪化している
このような所見や症状を伴う場合には、慎重な評価が必要です。 MRIやCTで原因がはっきりしない場合でも、超音波内視鏡(EUS)によって詳しく観察することで、診断につながることがあります。
当院で行っている超音波内視鏡(EUS)検査については、 超音波内視鏡(EUS)検査の詳しい説明 をご覧ください。
MRIやCTで原因がはっきりしない場合でも、EUSが有用なことがあります
MRIやCTは、膵臓を評価するうえで欠かせない重要な検査です。 一方で、膵臓は胃や腸管のガス、周囲の臓器との位置関係などの影響を受けるため、画像検査だけでは判断が難しい場合があります。
特に、膵管拡張の原因がはっきりしない場合や、膵管が途中で途絶しているように見える場合には、超音波内視鏡(EUS)による詳しい観察が診断の助けになることがあります。
今回の症例でも、MRIでは十二指腸憩室による圧排が疑われていました。 しかし、膵管拡張と膵管途絶の所見を踏まえてEUSで詳しく観察したところ、膵頭部に腫瘤を認め、診断につながりました。
膵管拡張に関するよくある質問
Q. 膵管拡張を指摘されたら、膵がんなのでしょうか?
A. 膵管拡張があるからといって、必ず膵がんというわけではありません。 加齢変化、慢性膵炎、膵石、十二指腸憩室による圧排など、良性の原因で起こることもあります。 一方で、膵腫瘍によって膵管が狭くなり、その上流の膵管が拡張することもあるため、原因を確認することが大切です。
Q. MRIやCTで原因がはっきりしない場合でも、追加検査は必要ですか?
A. MRIやCTは膵臓の評価に重要な検査ですが、病変の場所や大きさ、周囲の臓器との位置関係によっては判断が難しい場合があります。 特に、膵管拡張の原因がはっきりしない場合や、膵管の途絶が疑われる場合には、超音波内視鏡(EUS)による詳しい観察が診断の助けになることがあります。
Q. EUS-FNAでは何が分かりますか?
A. EUS-FNAは、超音波内視鏡で腫瘤を確認しながら細い針で組織を採取する検査です。 採取した組織を病理検査で調べることで、がんの有無だけでなく、がんの種類や組織型の確認につながることがあります。 治療方針を検討するうえで重要な情報となる場合があります。
まとめ
膵管拡張は、必ずしも膵がんを意味するわけではありません。 しかし、膵がんの発見につながる重要なサインのひとつです。
健診や画像検査で膵管拡張を指摘された場合には、 「経過観察でよい膵管拡張なのか」、 「追加検査が必要な膵管拡張なのか」を慎重に判断することが大切です。
MRIやCTで原因がはっきりしない場合でも、超音波内視鏡(EUS)によって、膵管拡張の原因をより詳しく評価できることがあります。
膵管拡張を指摘された方、膵臓の異常を指摘されて不安を感じている方は、専門医療機関への相談をご検討ください。
膵管拡張を指摘され、
詳しい検査が必要か迷っている方へ
健診や画像検査で膵管拡張を指摘された方の中には、経過観察でよい場合もあれば、追加の精密検査が必要となる場合もあります。 当院では、必要に応じて超音波内視鏡(EUS)による詳しい評価や、膵がんドックを行っています。
超音波内視鏡(EUS)年間430件(2025年)の検査実績をもとに診療を行っています。
※ EUSを初めて受ける方はWEB問診からご相談ください
① WEB問診を開き、患者情報を入力
② 診療科の選択で「超音波内視鏡(EUS)検査 事前問診【初診の方】」をお選びください
③ 問診にご回答後、折り返しの電話連絡を希望する方には、翌営業日以降にスタッフまたは院長よりご連絡いたします