2026年7月13日
健康診断や人間ドックの腹部エコーで「膵管拡張」を指摘された場合、次に受けるべき検査は何でしょうか。
多くの場合は、まず腹部MRI・MRCPで膵管や膵臓全体を確認し、その結果に応じて超音波内視鏡検査(EUS)を追加します。
このコラムでは、膵管拡張の精密検査の流れと、EUSが必要となるケースを胆膵専門医が分かりやすく解説します。
腹部エコーで膵管拡張を指摘されたら
近年、健康診断や人間ドックの腹部エコーで「膵管拡張」を指摘され、当院を受診される方が増えています。
膵管拡張は、膵がんをはじめとする膵臓の病気を見つける手がかりとなる重要な所見です。膵管拡張をきっかけに精密検査を受けることで、手術可能な早期の膵がんが見つかることもあります。
一方で、膵管拡張は加齢や慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)などでもみられます。そのため、膵管拡張を指摘されたからといって、必ずしも膵がんというわけではありません。
膵管拡張について詳しく知りたい方へ
膵管拡張の原因や膵がんとの関係、放置してよい場合については、こちらのコラムで詳しく解説しています。
健康診断で「膵管拡張」と言われた方へ
必要以上に心配するのではなく、まず適切な検査で、本当に膵管が拡張しているのか、原因となる病気がないかを確認することが大切です。
「次に何を受ければよいか」が分かりにくい理由
健診結果には「消化器内科を受診し、精密検査を受けてください」と書かれていても、具体的にどの検査を受ければよいのかまでは記載されていないことが少なくありません。
胃のバリウム検査で異常を指摘された場合は胃カメラ、便潜血検査が陽性の場合は大腸カメラというように、その後の検査が比較的分かりやすいものもあります。
一方、膵臓の検査には、腹部MRI・MRCP、造影CT、超音波内視鏡検査(EUS)など複数の種類があります。
どの検査を行うかは、症状や腹部エコーの所見、患者さんの背景に加え、医療機関の体制や担当医の判断によって異なるのが現状です。
まず行う検査は腹部MRI・MRCP
当院では、腹部エコーで膵管拡張を指摘された場合、まず腹部MRI・MRCPを受けることをお勧めしています。
患者さんが持参される健診結果表には、腹部エコーの所見として「膵管拡張」と記載されているだけで、膵管のどの部分が、どの程度拡張しているのかまでは記載されていないことが少なくありません。
腹部MRI・MRCPは、膵管全体の走行や太さを一度に確認するのに適した検査です。また、CTと異なり放射線被ばくがなく、EUSのように内視鏡を挿入する必要もありません。
MRI・MRCPによって、主に次のような点を確認できます。
MRI・MRCPで確認できること
- 実際に膵管が拡張しているか
- 膵管のどの部分が、どの程度拡張しているか
- 膵管拡張の原因となる狭窄がないか
- 膵嚢胞や膵腫瘤などの異常がないか
MRI・MRCPで膵管拡張や膵嚢胞、腫瘤などの異常が認められず、症状や血液検査、患者さんの背景からも膵臓の病気が強く疑われない場合には、EUSや造影CTなどの追加検査が不要となることもあります。
一方、MRI・MRCPで異常が確認された場合や、MRIでは原因を十分に特定できない場合には、EUSや造影CTを追加して、さらに詳しく調べます。
このような理由から、当院では、腹部エコーで膵管拡張を指摘された場合の最初の精密検査として、腹部MRI・MRCPをお勧めしています。
当院では連携する外部医療機関にMRI・MRCPを依頼しており、比較的早い時期に検査を受けることが可能です。
MRI・MRCPで異常があった場合はEUSを検討します
当院では、MRI・MRCPで膵管拡張や膵管狭窄、膵嚢胞などの異常が確認された場合や、膵管拡張の原因がはっきりしない場合には、超音波内視鏡検査(EUS)を検討します。
実際のMRI・MRCPでは、下の画像のように、膵管が部分的に細くなる「膵管狭窄」と、その先の膵管拡張、膵嚢胞などが確認されることがあります。
(平賀診療所 秋山新二郎先生ご提供)
EUSは、先端に超音波装置が付いた内視鏡を胃や十二指腸まで挿入し、膵臓を近い距離から観察する検査です。CTやMRIでは捉えにくい小さな膵腫瘍や、わずかな膵管の変化を詳しく評価できることがあります。
MRI・CTとEUSの役割の違いについては、 「超音波内視鏡(EUS)とは?MRIやCTと何が違うの?」 で詳しく解説しています。
日本膵臓学会の膵がん診療ガイドラインでも、膵がんが疑われる場合には、MRI・MRCP、造影CT、EUSなどを所見に応じて組み合わせて精査することが示されています。
特に、次のような場合にはEUSによる追加検査を検討します。
EUSを検討する主なケース
- MRI・MRCPでも膵管拡張の原因が分からない
- 膵管が部分的に細くなっている、または途切れている
- 膵管の太さが急に変化している
- 膵嚢胞やIPMNが見つかった
- 小さな膵腫瘍が疑われる
- MRIで腫瘍は見えないものの、膵がんを否定できない
EUSは膵臓を詳しく観察できる一方で、内視鏡の挿入や鎮静が必要な検査です。
EUSの検査方法や当日の流れ、苦しさ、費用については、 「超音波内視鏡(EUS)とは?検査の流れ・苦しさ・費用・わかる病気」 で詳しく解説しています。
そのため、腹部エコーで膵管拡張を指摘されたすべての方が、最初からEUSを受ける必要があるわけではありません。
まずMRI・MRCPで膵管全体を確認し、その結果に応じてEUSを追加することで、患者さんの負担を抑えながら、必要な精密検査を進めることができます。
MRI・MRCPを受けられない場合
当院では、原則として腹部MRI・MRCPを最初に行います。
ただし、閉所恐怖症が強く、検査中に装置の中で静止することが難しい場合や、体内にMRI検査に対応していない医療機器・金属が入っている場合などには、MRIを受けられないことがあります。
また、ペースメーカーなどの植込み型医療機器や刺青がある場合には、機器の種類やMRIの撮影条件、依頼先医療機関の安全基準によって、検査が可能かどうかを事前に確認する必要があります。
MRI・MRCPを受けられない場合には、腹部エコーの所見や症状などを踏まえ、造影CTや超音波内視鏡検査(EUS)を行います。
造影CTは、膵臓全体や周囲の血管、ほかの臓器との関係を確認するのに適しています。
一方、EUSは膵臓を近い距離から観察できるため、小さな膵腫瘍やわずかな膵管の変化を詳しく調べるのに適しています。
そのため、MRI・MRCPが難しい場合にも、ほかの検査を組み合わせることで、膵管拡張の原因を詳しく調べることができます。
腹部エコーで膵管拡張を指摘された後の検査の流れ
当院における検査の流れをまとめると、以下のようになります。
腹部エコーで膵管拡張を指摘された場合の当院における検査の流れ
まとめ
腹部エコーで膵管拡張を指摘されたからといって、すぐに膵がんを意味するわけではありません。
しかし、膵管拡張は膵臓の病気を見つける手がかりとなる所見であるため、そのままにせず、原因を確認することが大切です。
当院では、腹部エコーで膵管拡張を指摘された場合、原則として、まず腹部MRI・MRCPで膵管全体と膵臓の状態を確認します。
MRI・MRCPで膵管拡張や膵管狭窄、膵嚢胞などの異常が確認された場合や、膵管拡張の原因が明らかでない場合には、EUSを追加して詳しく調べます。
一方、MRI・MRCPを受けることが難しい場合には、腹部エコーの所見や患者さんの状態に応じて、造影CTやEUSを検討します。
腹部エコーで膵管拡張を指摘された場合に、すべての方が最初からEUSを受ける必要があるわけではありません。
まず適切な画像検査で状態を確認し、その結果に応じて必要な検査を段階的に進めることが重要です。
健診で膵管拡張を指摘された方は、健診結果表を持参のうえ、消化器内科へご相談ください。
健診の腹部エコーで
「膵管拡張」を指摘された方へ
膵管拡張は、膵臓の病気を見つける手がかりとなる所見です。 ただし、膵管拡張を指摘されたからといって、必ずしも膵がんというわけではありません。 健診結果表を確認し、膵管の状態や必要な精密検査を適切に判断することが大切です。
当院では、腹部エコーで膵管拡張を指摘された場合、原則として、まず腹部MRI・MRCPをお勧めしています。 連携する外部医療機関に検査を依頼しているため、比較的早い時期にMRI・MRCPを受けることが可能です。
MRI・MRCPの結果を確認したうえで、膵管狭窄、膵嚢胞、膵腫瘤などが疑われる場合には、超音波内視鏡検査(EUS)を追加します。 そのため、すべての方が最初からEUSを受ける必要があるわけではありません。
ご相談の際は、健診結果表やこれまでの画像検査結果をお持ちください。