2023年5月05日
腹部エコー検査の特徴とメリット
腹部超音波(腹部エコー)検査は、お腹の表面から超音波をあてて肝臓・胆のう・膵臓・腎臓などを観察する、体への負担が少ない画像検査です。
主なメリットは次の通りです。
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痛みや苦しみがほぼない
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放射線を使わないため被曝がない(X線やCTと違う点)
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検査時間が短い(10〜15分程度)
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CTやMRIより費用が安い
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健診や人間ドックでも受けられる
このため、健診やドックでもよく用いられています。
なぜ膵臓は腹部エコーで見えにくいのか
膵臓は胃の裏側(背中側)にあるため、皮下脂肪・内臓脂肪・胃や腸のガスが超音波をさえぎってしまい、観察が難しい場合があります。
体位を変えたり、検査前にミルクティーなどを飲むことで描出が改善することもありますが、健診や人間ドックでは検査時間の制限があり、「膵臓描出不良」や「膵臓描出困難」と記載されることも少なくありません。
超音波内視鏡(EUS)なら膵臓を詳しく観察できる
超音波内視鏡(Endoscopic Ultrasound:EUS)は、先端に超音波装置が付いた内視鏡を口から挿入し、胃や十二指腸の内側から膵臓を近距離で観察する検査です。
そのため、腹部エコーのように脂肪やガスの影響を受けにくく、膵臓全体を高精細に観察できます。
また、CTやMRIでは見つからないような小さな膵腫瘍や嚢胞性病変を発見できるのも大きな特徴です。
実際の症例
当院での超音波内視鏡検査の例をご紹介します。
<30代女性>
人間ドックの腹部エコーで「膵臓描出不良」と書かれていたため、当院で膵がんドックを受けられました。
超音波内視鏡検査では、膵臓の頭の部分(膵頭部)から尻尾の部分(膵尾部)まで全て鮮明に観察できました。
<60代男性>
腹部エコーで10mmの胆嚢ポリープを指摘されたため、超音波内視鏡検査を行いました。
腹部エコーでは膵臓の異常は指摘されませんでしたが…
超音波内視鏡では、膵臓の頭の部分(膵頭部)に16mmののう胞性病変を認め、分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と診断しました。
分枝型IPMNは膵癌の危険因子ですが、超音波内視鏡をすることで発見でき、その後は定期的にフォローとなりました。
超音波内視鏡の注意点
このように、超音波内視鏡検査は、とても有用な膵臓の画像検査です。
しかし一方で次のような注意点もあります。
- 口から内視鏡を入れなければいけない
- 高度な技術を要するため、施行できる医師・施設が限られている
超音波内視鏡検査は、文字通り内視鏡検査ですので、まず内視鏡を口から入れる必要があります。
しかも超音波内視鏡は、通常の胃カメラよりも太いです。
ただし鎮静剤をしっかり使用しますので、ほぼ寝ている状態で検査を受けることができます。
また超音波内視鏡検査できちんと膵臓を観察するためには、手技の熟練を要します。
胃カメラや大腸カメラと違って、超音波内視鏡をマスターしている医師が少ないのが現状です。
そのため当院には、東京23区や東京都外から超音波内視鏡検査に受けに来院される方がいます。
まとめ
腹部エコーで膵臓が見えにくい場合、すぐにEUSが必要とは限りません。
しかし、膵癌の危険因子がある方や、嚢胞・膵管拡張などの異常を指摘された方は、精密検査として超音波内視鏡を検討する価値があります。
膵がんは早期発見が何より重要です。画像検査の特性を理解し、自分に合った検査方法を主治医と相談しましょう。