2025年3月22日
胃カメラで「胃ポリープがあります」と言われると、がんではないかと不安になる方も少なくありません。
胃ポリープの多くは良性で経過観察となりますが、色調や形が通常と異なる場合には、生検や切除による詳しい確認が必要になることがあります。
今回は、日常診療でよくみられる胃底腺ポリープと、赤くラズベリーのような形を示すことがあるラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍について、当院で経験した症例をもとに解説します。
症例
50代女性の方です。
上腹部痛があり、当院を受診されました。
3年前に他院で胃カメラを受け、胃にポリープがあると言われたそうです。
当院で胃カメラを行ったところ、胃の粘膜は健康的でピロリ菌感染の痕跡はありませんでした。
検査では胃底腺ポリープが多数見られました。

しかし1個だけ、仲間外れのポリープがありました。
他のポリープとくらべて、赤みの強いポリープです。

水中で観察しますと、「ラズベリー」のような特徴的な形態をしています。

生検でGroup 3(良性腫瘍)と結果が出ましたが、慎重を期して大学病院で内視鏡的に切除していただきました。
最終診断は腺窩上皮型胃腫瘍で、悪性所見はありませんでした。
胃底腺ポリープとラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍
胃底腺ポリープとは?
胃底腺ポリープは、一般的にピロリ菌に感染していないキレイな胃に発生します。
大きさは数mm程度で、胃の粘膜と同じような色調で、複数個存在することがあります。
逆流性食道炎の治療に使用される制酸剤(プロトンポンプ阻害剤など)を長期に服用していると、胃底腺ポリープが大きくなったり、数が増えたりすることがあります。
がん化する危険性はきわめて低いとされています。
ラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍とは?
ラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍とは、2019年に日本から報告された、比較的新しい胃腫瘍での一種です。
この腫瘍は、ピロリ菌に感染していない胃に発生しやすく、鮮やかな赤色調を呈し、ラズベリー様の形態をしているのが特徴です。
当初は非常に稀な腫瘍とされていましたが、近年は内視鏡医の間での認知度が高まり、診断例も増加しています。
実際に当院でもすでに10例以上の症例を診断しています。
以下は当院で経験したラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍の一部です。






この腫瘍が「がん」なのかは、明確な結論は出ていません(Q and Aを参照してください)。
しかし、診断がついた場合には、内視鏡的な切除が勧められています。
これにより、組織学的な確定診断が可能になるとともに、将来的な悪性化のリスクを回避することができます。
この症例のポイント
胃底腺ポリープは、胃カメラでよく見つかる良性のポリープで、多くは経過観察となります。
一方で、赤みが強い、表面の形が通常と異なる、急に大きくなったなどの特徴がある場合には、通常の胃底腺ポリープとは異なる病変の可能性も考えます。
胃ポリープを指摘された場合は、ポリープの数だけでなく、色調・形・表面構造を内視鏡で丁寧に確認することが大切です。
胃底腺ポリープとラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍に関するQ&A
◆ Q. 胃底腺ポリープは生検または切除する必要はありますか?
A. 典型的な胃底腺ポリープであれば、生検や切除が不要なことが多いです。
胃底腺ポリープは良性のポリープで、がん化することはまれとされています。
そのため、内視鏡で典型的な胃底腺ポリープの特徴が確認できる場合には、通常は生検や治療を行わずに経過をみることがあります。
ただし、以下のような場合には、念のため生検を行うことがあります。
- ポリープが1cm以上と大きい場合
- 表面の形状や色調が通常の胃底腺ポリープと異なる場合
- ポリープが急に大きくなった場合
◆ Q. 逆流性食道炎でプロトンポンプ阻害剤(PPI)を長期間服用しています。胃カメラでたくさんの胃ポリープが見つかりました。薬をやめた方がいいでしょうか?
A. 胃ポリープが見つかった場合でも、自己判断でPPIを中止しないことが大切です。
PPIを長期間服用していると、胃底腺ポリープが増えることがあります。このタイプのポリープの多くは良性で、健康上大きな問題にならないことが多いと考えられています。
一方で、PPIを中止すると逆流性食道炎の症状が再発したり、悪化したりすることがあります。
そのため、胃ポリープが見つかったからといって自己判断で薬を中止することはおすすめできません。PPIを継続するメリットとデメリット、他の治療法の選択肢について、処方を受けている医療機関で確認してください。
また、必要に応じて定期的な胃カメラでポリープの状態を確認することも大切です。

◆ Q. ラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍は「がん」ですか?
A. 現時点では、比較的おとなしい経過をたどる腫瘍と考えられています。
ラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍が初めて報告された当初は、「胃がん」の一種として扱われていました。
しかし、その後の症例の蓄積により、この病変をどのように位置づけるかについては、現在も専門家の間で議論があります。
現在の医学的見解では、比較的おとなしい経過をたどる腫瘍と考えられることが多い一方で、長期的な自然経過についてはまだ十分に分かっていない点もあります。
そのため、発見された場合には、病変の大きさや形、場所などを確認したうえで、内視鏡的切除などの対応が検討されることがあります。
参考文献
柴垣 広太郎、他.消化器内視鏡 2022;34:235-41.
今枝 博之、他.消化器内視鏡 2024;36:242-9.
Shibagaki K, et al. Endosc Int Open 2019; 07(06): E784-E791
Shibagaki K, et al. Dig Endosc 2025.
※本コラムで紹介する症例は、当院で経験した症例をもとに、個人が特定されないよう一部内容を調整して掲載しています。掲載時期と実際の検査時期は必ずしも一致しません。
胃ポリープを指摘され、
詳しい確認が必要か気になる方へ
胃ポリープの多くは良性ですが、色調や形が通常と異なる場合には、生検や経過観察、必要に応じた専門的な判断が必要になることがあります。
当院では、検査への不安や苦痛に配慮しながら、鎮静剤を使用した胃カメラ検査を行っています。