2025年1月13日
総胆管結石とは、胆汁の通り道である「総胆管」に石が入り込んだ状態です。 胆のう結石と異なり、胆管炎や急性膵炎の原因になることがあり、みぞおちや右上腹部の痛み、発熱、黄疸、尿の色が濃いなどの症状が出ることがあります。
この記事では、当院で経験した症例をもとに、総胆管結石と胆のう結石の違い、症状、検査、治療、受診の目安について、患者さんにわかりやすく解説します。
まず結論:総胆管結石で大切なポイント
- ☑ 総胆管結石は、胆汁の通り道である「総胆管」に石が入り込んだ状態です。
- ☑ 胆のう結石と異なり、胆管炎や急性膵炎の原因になることがあります。
- ☑ みぞおちから右上腹部の痛み、発熱、黄疸、尿の色が濃い場合は注意が必要です。
- ☑ 発熱・黄疸・強い腹痛がある場合は、救急対応可能な医療機関を早めに受診してください。
- ☑ 症状が落ち着いている場合や、健診・腹部エコーで胆管拡張を指摘された場合は、腹部エコーや血液検査などで評価します。
- ☑ 当院では、腹部エコー・血液検査・必要に応じた超音波内視鏡検査(EUS)で評価し、総胆管結石が疑われる場合は高次医療機関・専門病院へ紹介します。
早めの受診が必要な症状
- ☑ 38℃前後の発熱や悪寒がある
- ☑ 皮膚や白目が黄色い、尿の色が濃い
- ☑ みぞおちから右上腹部に強い痛みがある
- ☑ 吐き気・嘔吐を伴う
- ☑ ぐったりしている、意識がぼんやりする
上記の症状がある場合は、急性胆管炎や急性膵炎の可能性があります。 特に発熱・黄疸・強い腹痛を伴う場合は、救急対応可能な医療機関を早めに受診してください。
症例
50代男性の方です。 みぞおちの痛みを自覚し、その翌日に当院を受診されました。
ご本人は「胃が悪いのではないか」と考えており、胃カメラを希望されていました。 しかし、問診で詳しく症状をうかがうと、みぞおちの痛みに加えて「尿の色が濃い」ことが分かりました。
尿の色が濃い場合、胆汁の流れが悪くなり、黄疸に関連した変化が起きていることがあります。 そのため、まず腹部超音波検査と血液検査を行い、翌日に胃カメラを予定しました。
腹部超音波検査では、胆のう内に複数の結石を認めました。 一方で、この時点では胆管に明らかな異常は認めませんでした。
しかし翌朝、血液検査の結果を確認したところ、肝臓・胆道系の酵素が大きく上昇していました。
血液検査の結果から、胆のう結石だけでなく、胆管に石が落ちている「総胆管結石」の可能性を疑いました。 そこで急きょ、超音波内視鏡検査(EUS)を行いました。
超音波内視鏡検査では、胆のう内に多数の結石を認め、泥状の胆汁もみられました。 また、胆のうの壁はやや厚くなっていました。
さらに、総胆管内には5〜6mm大の結石を2個認めました。
以上より総胆管結石と診断しました。 総胆管結石は、胆管炎や急性膵炎の原因になることがあるため、速やかな対応が必要です。
当院ではERCPなどの胆管治療は行っていないため、同日、日本医科大学多摩永山病院の消化器内科へ紹介し、診療をお願いしました。 その日のうちに、総胆管結石に対する内視鏡的治療を行っていただきました。
日本医科大学多摩永山病院 消化器内科 河野 惟道先生ご提供
さらに2日後には、外科で胆のうの切除術、すなわち腹腔鏡下胆のう摘出術も行われました。 その3日後には無事に退院されています。
本症例は、当院初診から約1週間で、総胆管結石の診断、専門病院での内視鏡的治療、胆のう摘出術、退院まで進むことができたケースです。
みぞおちの痛みだけでは胃の病気のように感じることがありますが、尿の色が濃い、発熱がある、皮膚や白目が黄色いなどの症状を伴う場合には、胆管の病気が隠れていることがあります。
総胆管結石とは?胆のう結石との違い
総胆管結石とは、胆汁の通り道である「総胆管」に石が入り込んだ状態です。 一方、胆のう結石は、胆汁を一時的にためておく「胆のう」の中に石がある状態です。
胆のう結石は、無症状であれば経過観察になることもあります。 しかし、総胆管結石は胆汁の流れを妨げ、急性胆管炎や急性膵炎の原因になることがあるため、注意が必要です。
| 項目 | 胆のう結石 | 総胆管結石 |
|---|---|---|
| 石がある場所 | 胆のうの中 | 総胆管の中 |
| 症状 | 無症状のことも多い | 腹痛、発熱、黄疸などが出ることがある |
| 主な危険性 | 胆のう炎、胆石発作など | 急性胆管炎、急性膵炎など |
| 治療の考え方 | 症状や状態により経過観察または手術 | 原則として治療が検討される |
総胆管結石は、結石のでき方によって大きく2つに分けられます。
- 原発性総胆管結石:総胆管の中でできた結石
- 二次性総胆管結石:胆のう内の結石が総胆管に落ちてきたもの
実際には、胆のう結石が総胆管に落ちて総胆管結石になるケースが多くみられます。 そのため、胆のう結石を指摘されている方で、腹痛・発熱・黄疸などがある場合には注意が必要です。
総胆管結石でみられる症状
総胆管は胆汁が流れる細い管です。 その中に小さな結石があるだけでも、胆汁の流れが悪くなり、症状が出ることがあります。
総胆管結石でみられる主な症状には、以下のようなものがあります。
総胆管結石で注意したい症状
- ☑ みぞおちから右上腹部の痛み
- ☑ 発熱、悪寒
- ☑ 皮膚や白目が黄色くなる
- ☑ 尿の色が濃くなる
- ☑ 吐き気、嘔吐
- ☑ 倦怠感、食欲低下
特に、腹痛・発熱・黄疸がそろっている場合には、急性胆管炎を起こしている可能性があります。 急性胆管炎では、炎症反応、肝機能異常、胆管拡張や結石などの画像所見を組み合わせて診断されます。急性胆管炎の代表的な症状として、発熱・悪寒、黄疸、右上腹部または上腹部痛が挙げられています。
さらに、意識がぼんやりする、血圧が下がる、ぐったりしているなどの症状がある場合は、重症の胆管炎や敗血症につながっている可能性があり、緊急対応が必要です。
また、総胆管の出口は膵液の通り道である膵管の出口と近いため、総胆管結石が急性膵炎の原因になることもあります。 強い上腹部痛や背中の痛み、嘔吐を伴う場合にも注意が必要です。
総胆管結石の検査
総胆管結石は、症状、血液検査、画像検査を組み合わせて評価します。 一つの検査だけで必ず分かるとは限らないため、疑わしい場合には複数の検査を組み合わせることがあります。
血液検査
血液検査では、胆汁の流れが悪くなっていないか、炎症が起きていないか、膵炎を起こしていないかを確認します。
- 肝胆道系酵素:AST、ALT、ALP、γ-GTPなど
- 黄疸の指標:総ビリルビン、直接ビリルビンなど
- 炎症の指標:白血球数、CRPなど
- 膵炎の指標:アミラーゼ、リパーゼなど
今回の症例でも、尿の色が濃いことをきっかけに血液検査を行い、肝胆道系酵素の上昇から総胆管結石を疑いました。
腹部超音波検査
腹部超音波検査は、胆のう結石の有無や胆管の拡張を確認するために有用な検査です。 体への負担が少なく、外来で行いやすい検査です。
ただし、総胆管結石そのものは、腹部超音波検査で見えにくいことがあります。 お腹のガス、体格、石の大きさや場所によって、結石がはっきり映らないことがあるためです。
CT・MRI/MRCP
CTやMRI/MRCPでは、胆管の拡張、胆管内の結石、胆のうや膵臓の状態を確認します。 腹部超音波検査で分かりにくい場合に追加されることがあります。
一方で、総胆管結石が小さい場合や泥状の場合には、CTやMRIでもはっきりしないことがあります。
超音波内視鏡検査(EUS)
超音波内視鏡検査(EUS)は、胃や十二指腸の中から胆管や膵臓の近くに超音波を当てる検査です。 体の表面から行う腹部エコーよりも胆管に近い位置から観察できるため、小さな総胆管結石の評価に役立つことがあります。
胆石症診療ガイドライン2021でも、腹部超音波検査、CT、MRI/MRCPで総胆管結石が確認できない場合に、ERCP前の検査としてEUSが位置づけられています。
当院では、症状や血液検査、腹部エコーの結果を踏まえ、必要に応じてEUSで胆管・胆のう・膵臓の評価を行います。 EUSについて詳しく知りたい方は、超音波内視鏡検査(EUS)のページもご覧ください。
ただし、総胆管結石に対するERCP治療は当院では行っていないため、治療が必要と判断される場合には高次医療機関・専門病院へ紹介します。
総胆管結石の治療
総胆管結石は、急性胆管炎や急性膵炎の原因になることがあるため、診断された場合には治療が検討されます。 胆のう結石のように、無症状だから必ず経過観察でよいとは言いにくい病気です。
内視鏡的治療
日本の多くの医療機関では、総胆管結石に対して内視鏡的治療が行われます。 代表的な治療は、ERCPという内視鏡を用いた胆管治療です。
ERCPでは、口から内視鏡を入れて十二指腸まで進め、胆管の出口である十二指腸乳頭から処置具を入れます。 必要に応じて、胆管の出口を広げ、結石を取り出したり、胆汁の流れを改善したりします。
ERCPは治療として有用ですが、急性膵炎、出血、穿孔などの偶発症が起こることがあります。 そのため、診断目的だけで安易に行う検査ではなく、治療が必要な場合に専門医療機関で行われます。
外科的治療
外科的治療では、全身麻酔のもとで胆管内の結石を取り除きます。 また、胆のう結石が原因で総胆管結石を起こした場合には、再発予防のために胆のう摘出術が検討されます。
実際には、まずERCPで総胆管結石を取り除き、その後に腹腔鏡下胆のう摘出術を行う流れが選択されることがあります。 ただし、年齢、持病、全身状態、結石の大きさや数、施設の体制によって治療方針は変わります。
当院では総胆管結石に対するERCPや手術は行っていません。 総胆管結石が疑われる場合や治療が必要と判断される場合には、患者さんの状態に応じて高次医療機関・専門病院へ紹介します。
受診の目安
総胆管結石は、症状が軽いように見えても、胆管炎や膵炎につながることがあります。 特に発熱、黄疸、強い腹痛がある場合は、早めの判断が大切です。
救急対応可能な医療機関を早めに受診した方がよい症状
- ☑ 発熱や悪寒がある
- ☑ 皮膚や白目が黄色い
- ☑ 尿の色が濃い
- ☑ みぞおちから右上腹部に強い痛みがある
- ☑ 吐き気や嘔吐を伴う
- ☑ ぐったりしている、意識がぼんやりする
上記の症状がある場合は、急性胆管炎や急性膵炎の可能性があります。 特に発熱・黄疸・強い腹痛を伴う場合は、救急対応可能な医療機関を受診してください。
当院で評価できるケース
- ☑ 健診や腹部エコーで胆管拡張を指摘された
- ☑ 胆のう結石があり、胆管も心配と言われた
- ☑ 症状は落ち着いているが、以前にみぞおちや右上腹部の痛みがあった
- ☑ 血液検査で肝胆道系酵素やビリルビンの異常を指摘された
症状が落ち着いている場合や、健診・腹部エコーで胆管拡張を指摘された場合には、当院で腹部エコーや血液検査を行い、必要に応じてEUSで詳しく評価することがあります。 総胆管結石が疑われる場合には、治療可能な高次医療機関・専門病院へ紹介します。
総胆管結石に関するよくある質問
総胆管結石に関するよくある質問
Q1. 総胆管結石とは何ですか?
A. 胆汁の通り道である「総胆管」に石が入り込んだ状態です。
胆汁は肝臓で作られ、胆管を通って十二指腸へ流れます。 総胆管結石は、その通り道である総胆管に石が詰まったり、引っかかったりする病気です。 胆汁の流れが悪くなると、腹痛、発熱、黄疸、尿の色が濃くなるなどの症状が出ることがあります。
Q2. 胆のう結石と総胆管結石は何が違いますか?
A. 石がある場所と、起こりやすい合併症が異なります。
胆のう結石は、胆汁をためる袋である「胆のう」の中に石がある状態です。 一方、総胆管結石は胆汁の通り道である「総胆管」に石がある状態です。 胆のう結石は無症状で経過観察になることもありますが、総胆管結石は胆管炎や急性膵炎の原因になることがあるため、より注意が必要です。
Q3. どのような症状があると総胆管結石を疑いますか?
A. みぞおちや右上腹部の痛み、発熱、黄疸、尿の色が濃い場合は注意が必要です。
総胆管結石では、みぞおちから右上腹部の痛み、発熱、悪寒、皮膚や白目が黄色くなる黄疸、尿の色が濃くなるなどの症状がみられることがあります。 特に、腹痛・発熱・黄疸がそろっている場合は、急性胆管炎を起こしている可能性があります。
早めの受診が必要な症状
- ☑ 発熱や悪寒がある
- ☑ 皮膚や白目が黄色い
- ☑ 尿の色が濃い
- ☑ みぞおちから右上腹部に強い痛みがある
- ☑ 吐き気や嘔吐を伴う
- ☑ ぐったりしている、意識がぼんやりする
Q4. 総胆管結石は放置してもよいですか?
A. 原則として、放置せず治療が検討されます。
総胆管結石は、胆汁の流れを妨げ、急性胆管炎や急性膵炎の原因になることがあります。 そのため、胆のう結石のように「無症状ならそのまま様子を見る」とは言いにくい病気です。 症状がない場合でも、年齢、持病、結石の状態、血液検査や画像検査の結果をもとに、専門医療機関で治療の必要性が判断されます。
Q5. 総胆管結石はどのように治療しますか?
A. 多くの場合、内視鏡を使って胆管内の石を取り除く治療が行われます。
代表的な治療はERCPという内視鏡治療です。 口から内視鏡を入れて十二指腸まで進め、胆管の出口から処置具を入れて石を取り除きます。 胆管炎を起こしている場合には、胆汁の流れを改善する処置が急いで必要になることもあります。 当院ではERCP治療は行っていないため、治療が必要と判断される場合は高次医療機関・専門病院へ紹介します。
Q6. 総胆管結石は内視鏡で取れますか?
A. 多くの総胆管結石は、専門医療機関で内視鏡的に治療されます。
総胆管結石に対する内視鏡治療では、胆管の出口を広げ、専用の処置具を使って石を取り出します。 ただし、石が大きい、数が多い、胃の手術後で内視鏡が届きにくいなどの場合には、複数回の治療や外科的治療が検討されることもあります。 治療方法は、結石の大きさや数、患者さんの全身状態、医療機関の体制によって決まります。
Q7. 総胆管結石があると膵炎になることがありますか?
A. はい。総胆管結石は急性膵炎の原因になることがあります。
胆管の出口と膵管の出口は、十二指腸乳頭という近い場所にあります。 総胆管結石が胆管の出口付近に引っかかると、膵液の流れにも影響し、急性膵炎を起こすことがあります。 強い上腹部痛、背中の痛み、吐き気や嘔吐を伴う場合には、早めの受診が必要です。
Q8. 健診や腹部エコーで胆管拡張を指摘された場合はどうすればよいですか?
A. 症状がなくても、一度詳しく評価することをおすすめします。
胆管拡張は、胆汁の流れがどこかで悪くなっているサインのことがあります。 原因としては、総胆管結石、胆管の狭窄、膵臓や胆道の病気などが考えられます。 ただし、年齢や手術歴などによって胆管がやや太く見えることもあり、必ずしも重大な病気とは限りません。
当院では、症状、血液検査、腹部エコーなどをもとに評価し、必要に応じて超音波内視鏡検査(EUS)で胆管や膵臓を詳しく確認します。 EUSについては、超音波内視鏡検査(EUS)のページでもご案内しています。 総胆管結石や治療が必要な病気が疑われる場合には、高次医療機関・専門病院へ紹介します。
参考文献
日本消化器病学会編集.胆石症診療ガイドライン2021 改訂第3版.南江堂
Kondo S, et al. Eur J Radiol. 2005;54:271-275.
Boerma D, et al. Lancet. 2002;360:761-765.
Tsujino T, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2007;5:130-137.
※本コラムで紹介する症例は、当院で経験した症例をもとに、個人が特定されないよう一部内容を調整して掲載しています。掲載時期と実際の検査時期は必ずしも一致しません。