2026年5月22日
今回は、多摩市胃がん検診の胃内視鏡検査をきっかけに、十二指腸に認めた隆起性病変から十二指腸GISTの診断に至った一例をご紹介します。
十二指腸の隆起は、見た目だけでは良性のふくらみか腫瘍性病変か判断が難しいことがあり、詳しい評価には超音波内視鏡検査(EUS)が役立ちます。
本症例では、CT検査、EUS、EUS下穿刺吸引法(EUS-FNA)により十二指腸GISTと診断され、総合病院での手術後にlow grade GISTと確定診断されました。
症例
70代女性の方です。多摩市胃がん検診として、当院で胃内視鏡検査を受けられました。
胃には大きな異常を認めませんでしたが、十二指腸にラクダのコブのような隆起を認めました。
なお、3年前に他院で胃内視鏡検査を受けた際にも同様の隆起を指摘されていたそうですが、その時点では特に精密検査の指示はなかったとのことでした。
十二指腸隆起の精査目的にCT検査を行ったところ、十二指腸付近に腫瘤を認めました(矢印)。
そこで、超音波内視鏡検査(EUS)を施行しました。
EUSでは、十二指腸の壁の中に腫瘍性病変を認めました。通常の胃カメラでは表面の隆起として見える病変でも、EUSを行うことで、病変がどの層から発生しているのか、壁の中にあるのか、壁の外側に広がっているのかを詳しく評価することができます。
引き続き、EUS下穿刺吸引法(EUS-FNA)を行いました。
通常の内視鏡生検では、粘膜の下にある病変は診断が難しいことがあります。EUS-FNAでは、超音波で腫瘍を確認しながら細い針で組織を採取することで、粘膜下にある病変の病理診断が可能になります。
病理検査の結果、十二指腸GISTと診断されました。
その後、総合病院にご紹介し、腹腔鏡下手術を行っていただきました。手術後の最終診断は、low grade GISTでした。
十二指腸GISTとは?膵臓の腫瘍との区別が必要になることもあります
GISTとは、Gastrointestinal Stromal Tumorの略で、日本語では「消化管間質腫瘍」と呼ばれます。胃や小腸、十二指腸などの消化管の壁にできる腫瘍です。
胃がんや大腸がんは、主に消化管の粘膜から発生します。一方、GISTは消化管の壁の中にある間葉系細胞に由来する腫瘍で、内視鏡では表面の粘膜が正常に見える「粘膜下腫瘍」のような隆起として発見されることがあります。
GISTは胃に発生することが最も多く、全体の約60%を占めます。一方、十二指腸に発生するGISTは全体の4〜5%程度とされ、比較的まれです。
また、十二指腸GISTは部位によっては膵臓の近くに存在するため、CTだけでは膵神経内分泌腫瘍(膵NET)などの膵腫瘍との鑑別が難しい場合があります。EUSでは、病変が十二指腸の壁から発生しているのか、膵臓側の腫瘍なのかをより詳しく評価できるため、診断に有用です。
小さいうちは症状がないことも多く、今回のように胃がん検診や他の検査をきっかけに偶然見つかることがあります。
なぜEUSが必要なのか?
十二指腸の隆起を見た目だけで診断することは困難です。
表面の粘膜が正常に見えていても、消化管の壁の中に腫瘍が隠れていることがあります。また、病変が十二指腸の壁から発生しているのか、周囲の臓器から圧排されているだけなのかを、通常の胃カメラだけで判断することは難しい場合があります。
特に十二指腸付近の腫瘤では、十二指腸壁由来のGISTなのか、膵神経内分泌腫瘍(膵NET)など膵臓由来の腫瘍なのか、CTだけでは鑑別が難しいことがあります。
EUSでは、消化管の壁を層構造として観察できるため、病変が十二指腸の壁から発生しているのか、膵臓側の腫瘍なのかをより詳しく評価できます。 当院で行っている 超音波内視鏡検査(EUS) でも、消化管や膵臓周囲の病変を詳しく観察することができます。
さらに、必要に応じてEUS下穿刺吸引法(EUS-FNA)を行うことで、超音波で腫瘍を確認しながら組織を採取し、病理診断につなげることができます。
十二指腸の隆起で注意したいポイント
✔ 表面の粘膜が正常に見えても、消化管の壁の中に腫瘍が隠れていることがあります
✔ 通常の生検では診断がつかないことがあります
✔ 十二指腸GISTと膵NETなどの膵腫瘍との鑑別が必要になることがあります
✔ EUSにより、病変の発生部位や性状を詳しく確認できます
✔ 必要に応じてEUS-FNAによる病理診断を行います
GISTの治療について
GISTの治療は、腫瘍の大きさ、発生部位、増殖の速さ、転移の有無などを総合的に判断して決定されます。
転移を認めず、切除可能なGISTでは、手術による腫瘍の切除が基本となります。GISTは胃がんや大腸がんと異なり、リンパ節転移は比較的まれなため、通常は広範囲のリンパ節郭清よりも、腫瘍を安全に切除し、臓器の機能をできるだけ温存することが重視されます。
十二指腸GISTの場合、腫瘍の場所によっては膵臓や胆管に近いため、手術方法の選択が重要になります。部分切除で対応できる場合もありますが、発生部位や大きさによっては、より慎重な治療方針の検討が必要です。
また、腫瘍が大きい場合や再発リスクが高い場合、あるいは手術が難しい場合には、イマチニブなどの分子標的薬による治療が検討されます。手術後も、腫瘍の大きさや細胞の増殖の程度などから再発リスクを評価し、必要に応じて追加治療や経過観察が行われます。
今回の症例では、EUS-FNAにより十二指腸GISTと診断したうえで総合病院へご紹介し、腹腔鏡下手術を行っていただきました。手術後の最終診断は、low grade GIST、すなわち悪性度の低いGISTでした。
胃がん検診で見つかった異常をそのままにしないことが大切です
今回の症例では、多摩市胃がん検診の胃内視鏡検査をきっかけに、十二指腸GISTが見つかりました。
胃がん検診では、胃がんだけでなく、食道・胃・十二指腸のさまざまな病変が偶然見つかることがあります。特に、粘膜下腫瘍のように表面の粘膜が正常に見える隆起性病変では、通常の胃カメラだけでは診断が難しい場合があります。
「以前からあると言われているから大丈夫」と思っていても、病変の種類によっては精密検査が必要なことがあります。胃カメラで胃や十二指腸の隆起を指摘された方は、経過や大きさ、形の変化を含めて、専門的な評価を受けることが大切です。
関連する検査
胃や十二指腸の粘膜下腫瘍・隆起性病変では、病変の発生部位や内部の性状を詳しく確認するために、超音波内視鏡検査(EUS)が行われることがあります。
超音波内視鏡検査(EUS)について詳しくはこちら
多摩市胃がん検診について
令和8年度の多摩市胃がん検診【胃内視鏡検査】は、2026年6月1日より開始となります。
当院では、多摩市胃がん検診として胃内視鏡検査を実施しています。対象となる方は、多摩市からの案内をご確認のうえ、ご予約ください。
なお、令和6年度より多摩市の胃がん検診では、胃部エックス線検査(バリウム検査)は実施されておらず、胃内視鏡検査での実施となっています。
対象年齢、申込方法、受診期間などの詳細は、以下の多摩市公式ホームページをご確認ください。
【当院での受診をご希望の方へ】
当院での受診をご希望の方は、電話または来院にて受付を行っております。
ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
・お支払いは現金のみでお願いいたします。
・胃がん検診と保険診療(診察・大腸カメラなど)は、同じ日に行うことができません。
まとめ
今回は、多摩市胃がん検診で発見され、EUSおよびEUS-FNAで診断に至った十二指腸GISTの一例をご紹介しました。
十二指腸GISTは比較的まれな病気ですが、胃内視鏡検査で偶然見つかることがあります。通常の胃カメラだけでは診断が難しい場合もあり、EUSによる詳しい評価が診断に役立ちます。
胃カメラで胃や十二指腸の粘膜下腫瘍・隆起性病変を指摘された方は、必要に応じて精密検査を受けることが大切です。
※本コラムで紹介する症例は、当院で経験した症例をもとに、個人が特定されないよう一部内容を調整して掲載しています。掲載時期と実際の検査時期は必ずしも一致しません。