2024年10月25日
胃カメラで「胃粘膜下腫瘍」を指摘されることがあります。
胃粘膜下腫瘍の多くは良性ですが、その中には胃GIST(消化管間質腫瘍)など、詳しい評価が必要な病変が含まれることがあります。
今回は、胃カメラで指摘された胃粘膜下腫瘍に対して、超音波内視鏡検査(EUS)と組織検査を行い、胃GISTと診断された一例をご紹介します。
症例
80代女性の方です。
以前より胃カメラで胃粘膜下腫瘍を指摘されていました。 念のため総合病院で再評価を受けたところ、胃の壁の中に半球状に盛り上がる腫瘍を認めました。
胃カメラ検査
胃カメラでは、胃の粘膜の下から押し上げられるような、なだらかな隆起として観察されました。 このような病変は、表面の粘膜だけを見る通常の胃カメラでは、病変の正確な性質を判断することが難しい場合があります。
腹部CT検査
CT検査でも、胃壁内に約15mmの腫瘍が確認されました。
胃の壁のどの層から発生している病変なのか、またGISTなどの可能性があるかを評価するため、超音波内視鏡検査(EUS)目的に当院へご紹介となりました。
超音波内視鏡検査(EUS)で胃壁の内側を詳しく評価
超音波内視鏡検査(EUS)では、胃の壁を層構造として観察することができます。 胃粘膜下腫瘍では、病変が胃壁のどの層から発生しているかを確認することが、診断の手がかりになります。
今回の病変は、胃壁の第4層にあたる固有筋層から発生している腫瘍として観察されました。 この所見から、胃GISTなどの間葉系腫瘍が疑われました。
さらに詳しい診断のため、超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引法を行いました。 これは、EUSで病変を確認しながら細い針を用いて組織を採取する検査です。
病理検査の結果、胃GISTと診断されました。 今後は、紹介元の医療機関と連携し、外科的治療を含めた方針が検討される予定です。
胃粘膜下腫瘍とは?
胃粘膜下腫瘍とは、胃の表面の粘膜ではなく、その下の層にできる病変の総称です。 近年では、必ずしも腫瘍とは限らないため、「胃粘膜下病変」と表現されることもあります。
胃カメラでは、表面の粘膜が正常に見える一方で、胃の内側にこぶのような盛り上がりとして見つかることがあります。
胃の壁は、地層のようにいくつかの層が重なった構造をしています。 超音波内視鏡検査(EUS)では、胃の壁を層構造として観察できるため、病変がどの層から発生しているかを確認することができます。
胃粘膜下腫瘍では、発生している層によって、GIST、平滑筋腫、脂肪腫、神経内分泌腫瘍など、ある程度病変の種類を推定できることがあります。
胃GISTとは?
GISTは「消化管間質腫瘍」と呼ばれる腫瘍で、胃や小腸などの消化管の壁に発生します。 胃に発生するものを胃GISTといいます。
関連記事:十二指腸に発生したGISTの症例
GISTは胃だけでなく、十二指腸など他の消化管にも発生することがあります。 胃がん検診の胃カメラをきっかけに見つかった十二指腸GISTの症例も紹介しています。
胃GISTは、胃粘膜下腫瘍の一種で、胃壁の第4層である固有筋層から発生することが多い病変です。 小さいうちは無症状のことが多く、胃カメラやCT検査などで偶然見つかることがあります。
一方で、腫瘍が大きくなったり、出血を起こしたりすると、黒い便、貧血、息切れ、立ちくらみなどをきっかけに発見されることもあります。
胃GISTと診断された場合、外科的治療(手術)が第一選択となります(Q&Aをご参照ください)。なぜEUSが必要になるのか
胃粘膜下腫瘍は、通常の胃カメラでは表面の粘膜しか観察できません。 そのため、病変が胃壁のどの層から発生しているのか、内部が均一なのか、悪性を疑う所見があるのかまでは十分に判断できないことがあります。
超音波内視鏡検査(EUS)では、胃の壁の内部構造を詳しく観察できます。 特に、胃GISTが疑われる場合には、病変の大きさ、発生している層、内部の状態を確認するうえで重要な検査です。
また、必要に応じてEUSで病変を確認しながら組織を採取することで、病理診断につなげることができます。
胃粘膜下腫瘍を指摘された場合の注意点
胃粘膜下腫瘍を指摘された場合でも、すべての方にすぐ治療が必要になるわけではありません。 小さく、形に変化がない病変では、定期的な胃カメラで経過観察となることもあります。
一方で、以下のような場合には、EUSなどによる詳しい評価が検討されます。
胃粘膜下腫瘍で詳しい検査を検討するサイン
✔ 腫瘍が大きくなっている
✔ 2cm前後、またはそれ以上の大きさがある
✔ 表面にくぼみやびらん、潰瘍を伴う
✔ 黒い便や貧血など、出血を疑う症状がある
✔ 胃GISTなどが疑われる
GISTに関するよくある質問
Q. 胃GISTの治療法は?
A. 胃GISTの根本的な治療は、手術による切除です。
胃GISTと診断され、他の臓器への転移がない場合には、手術によって腫瘍を完全に取り除くことが治療の基本となります。
手術方法は、腫瘍の大きさや場所、胃の変形をどの程度避けられるかなどを考慮して決定されます。近年では、腹腔鏡手術のほか、胃カメラと腹腔鏡を組み合わせたLECS(腹腔鏡・内視鏡合同手術)が行われることもあります。
LECSでは、胃の内側から内視鏡で病変の位置を確認しながら、腹腔鏡で腫瘍を切除します。病変の場所によっては、胃を必要以上に大きく切らずに済む可能性があります。
一方で、腫瘍が非常に大きい場合や、転移がある場合、すぐに手術が難しい場合には、イマチニブなどの分子標的薬による薬物治療が検討されます。
Q. 小さな、2cm未満の胃GISTでも手術が必要ですか?
A. GISTと確定診断された場合には、小さくても手術が検討されます。
日本のGIST診療ガイドラインでは、胃GISTと診断された病変に対して、腫瘍の大きさに関わらず外科的切除が治療の基本とされています。
その理由の一つは、小さなGISTであっても、将来的に大きくなったり、まれに転移を起こしたりする可能性が完全には否定できないためです。
ただし、実際の診療では、「胃カメラで偶然見つかった2cm未満の小さな胃粘膜下腫瘍」が、すぐにGISTと診断されるわけではありません。 小さな病変では組織検査が難しいこともあり、明らかな悪性所見がなければ、まずは定期的な経過観察となることもあります。
つまり、重要なのは「2cm未満だから安心」と考えるのではなく、腫瘍の大きさ、形、増大傾向、EUS所見などを総合的に見て、精密検査や治療の必要性を判断することです。
Q. 胃粘膜下腫瘍が経過観察となった場合、どのくらいの頻度で胃カメラを受ければいいですか?
A. 病変の大きさや形によりますが、年1〜2回程度の胃カメラで変化を確認することが多いです。
ここでは、胃カメラで偶然見つかった小さな胃粘膜下腫瘍で、まだGISTと確定診断されていない場合を想定します。
1cm程度の小さな胃粘膜下腫瘍では、明らかな悪性所見がなければ、すぐに精密検査や治療を行わず、経過観察となることがあります。
ただし、小さな病変であっても、時間とともに大きくなる場合や、表面にくぼみ・びらん・潰瘍を伴う場合には、GISTなどの可能性を考えて詳しい検査が必要になります。
そのため、主治医の指示に従いながら、年1〜2回程度の胃カメラで、腫瘍の大きさや形に変化がないかを確認することが大切です。 必要に応じて、超音波内視鏡検査(EUS)やCT検査が検討されます。
胃粘膜下腫瘍で注意したい変化
✔ 腫瘍が以前より大きくなっている
✔ 2cm前後、またはそれ以上の大きさがある
✔ 表面にくぼみ、びらん、潰瘍を伴う
✔ 黒い便や貧血など、出血を疑う症状がある
✔ 胃GISTなどが疑われる
まとめ
胃粘膜下腫瘍は、胃カメラで偶然見つかることの多い病変です。 多くは経過観察となりますが、中には胃GISTのように詳しい評価や治療方針の検討が必要な病変も含まれます。
通常の胃カメラだけでは判断が難しい場合、超音波内視鏡検査(EUS)によって、胃壁のどの層から発生しているか、どのような性質の病変かを詳しく確認することができます。
胃粘膜下腫瘍を指摘され、不安がある方や、詳しい検査が必要か迷っている方は、主治医と相談のうえ、必要に応じてEUSによる精密検査を検討しましょう。
胃粘膜下腫瘍の精密検査について
胃粘膜下腫瘍は、通常の胃カメラだけでは病変の性質を判断しにくいことがあります。 必要に応じて、超音波内視鏡検査(EUS)で胃壁の内部を詳しく確認します。
超音波内視鏡(EUS)年間430件(2025年)の検査実績をもとに診療を行っています。
※ EUSを初めて受ける方はWEB問診からご相談ください
① WEB問診を開き、患者情報を入力
② 診療科の選択で「超音波内視鏡(EUS)検査 事前問診【初診の方】」をお選びください
③ 問診にご回答後、折り返しの電話連絡を希望する方には、翌営業日以降にスタッフまたは院長よりご連絡いたします
参考文献
岡田 裕之.Gastroenterol Endosc 2017;59:1289-1301.
木田 光弘、他.Gastroenterol Endosc 2018;60:1116-31.
Hirota S, et al. International Journal of Clinical Oncology. 2024;29:647-80.
※本コラムで紹介する症例は、当院で経験した症例をもとに、個人が特定されないよう一部内容を調整して掲載しています。掲載時期と実際の検査時期は必ずしも一致しません。