2025年11月15日
膵臓は「消化」と「血糖」を担う一方で、症状が出にくい“沈黙の臓器”です。
生活習慣の見直しと、適切な画像検査(MRI・超音波内視鏡)を選ぶことが、膵がんの早期発見につながります。
内視鏡専門医が、膵臓を守る具体的なポイントと受診の目安をわかりやすく解説します。
膵臓を守るためには、日々の生活習慣の見直しと適切な検査選びが大切です。
ヒント①「アルコール」と「喫煙」を見直す
膵臓を守るうえで避けて通れない話題が、お酒とタバコです。
■ アルコール
アルコールは膵炎(急性膵炎・慢性膵炎)の大きな原因の一つです。
膵炎が続くと膵臓の組織が破壊され、次のような影響が生じます。
- 膵臓の消化機能が低下する
- 糖尿病になりやすくなる
- 膵がんのリスクが上がる
「飲むなら適量」を心がけ、中でも連日の飲酒を避けることが膵臓の負担軽減につながります。
ちなみに“適量”とは、1日の純アルコール量20g未満が目安です。これは厚生労働省や多くの専門学会が示している基準です。
「純アルコール20g」は、一般的なお酒に置き換えると次の量です👇
| お酒の種類 | 適量の目安 |
|---|---|
| ビール(5%) | 中瓶1本(500mL) |
| 日本酒 | 1合(180mL) |
| ワイン(約12〜14%) | グラス2杯(約180mL) |
| 焼酎(25%) | 100mL(グラス半分程度) |
| ウイスキー(40%) | ダブル1杯 |
※体格・体質によって異なり、あくまで一般的な目安です。
■ 喫煙
タバコは、膵がんの明確なリスク因子として知られています。
喫煙者は非喫煙者と比べて、膵がんの発症リスクが約2倍に上昇すると報告されています。
また喫煙は、糖尿病や肥満による膵がんリスクをさらに高める要因にもなりえます。
喫煙は膵がんのリスクを高めることが知られており、禁煙は膵臓を守るうえで重要です。
禁煙をするとリスクは徐々に低下していきますが、非喫煙者と同じレベルまで下がるには約20年かかるとも言われています。
それでも禁煙を始めた時点から確実にリスクは下がり始めるため、膵臓を守るためには禁煙が最も効果的な予防策の一つです。
1日でも早い禁煙が、将来の膵臓を守ることにつながります。
ヒント② 体重を適正にする
肥満が続くと、肝臓に脂肪が溜まる「脂肪肝」と同じように、膵臓にも脂肪が沈着する=脂肪膵(fatty pancreas) という状態が起こります。
肥満により膵臓に脂肪が沈着した状態は「脂肪膵」と呼ばれ、近年注目されています。
脂肪膵は近年増加しており、以下の問題と関連します。
- 膵臓の炎症が起こりやすくなる
- 糖尿病になりやすい
- 膵臓の酵素の働きが弱くなる(膵外分泌機能低下)
- 膵がんのリスク上昇と関連している可能性がある
*脂肪膵と糖尿病、膵がんの関係についてもっと知りたい方は、 脂肪膵とは?糖尿病と膵がんとの関係 をご覧ください。
肥満を改善することにより、膵臓を守り、膵がんのリスクを下げられる可能性があります。
そのためには、次の2つが大切です。
体重を少しずつ適正化し、内臓脂肪を減らすことが膵臓を守る第一歩です。
- 5%の体重減少でも効果が期待できます
- 特に内臓脂肪を減らすことが重要です
まずは体重をわずか5%減らすことを目標にしましょう(例:70kgの方なら、3.5kgの減量が目安です)。
これにより、膵臓への負担は大きく軽減する可能性があります。
ウォーキング・食事管理・筋力トレーニングなどで内臓脂肪を減らすと、インスリン抵抗性の改善につながり、膵臓の負担軽減も期待できます。
- アルコールや喫煙はできるだけ避けましょう
肥満に加えて、飲酒や喫煙が重なると、膵炎や膵がんのリスクがさらに高くなると考えられています。
いわば“重なってはいけない組み合わせ”であり、可能な範囲で控える・禁煙することが大切です。
ヒント③ 「突然の血糖値の変化」に気づく
膵臓はインスリンなどのホルモンを分泌し、血糖値を調整しています。
膵臓はインスリン分泌を通じて血糖値を調整しており、異常があると血糖の変化として現れることがあります。
そのため、次のような変化がみられた場合には注意が必要です。
- 急に血糖値が上がった
- 急に糖尿病と診断された
- これまで安定していたHbA1cが悪化した
これらの変化について詳しく知りたい方は、
糖尿病が急に悪化した方へ|膵がんとの関係
もご覧ください。
特に注意が必要なのが、膵がんが血糖値の急上昇をきっかけに見つかるケースが一定数あることです。
血糖値の急な変動は、単なる生活習慣の問題ではなく、「膵臓からのサイン」である可能性もあります。
気になる変化があれば、早めに専門医へご相談ください。
このような血糖値の変化がある場合、必要に応じて膵臓の画像検査(MRIや超音波内視鏡)を検討することがあります。
ヒント④「血液検査だけに頼らず、画像検査を組み合わせる」
多くの方が健康診断の血液検査で「異常なし」と言われると安心されますが、
実は膵臓の病気は血液検査だけでは見つからないことが少なくありません。
詳しくは 血液検査だけではわからない?膵臓の隠れ病変 もご覧ください。
膵臓の“隠れた異常”を見逃さないためには、画像検査(MRI・MRCP・超音波内視鏡:EUS)の組み合わせが重要です。
■ MRI/MRCP
- 膵のう胞(IPMNなど)の評価
- 膵管の拡張
- 膵臓の構造変化の把握
■ 超音波内視鏡(EUS)
- 胃や十二指腸の内側から膵臓を近距離で観察
- 数mmレベルの小さな病変の描出が可能
- 早期変化の評価に有用な精密検査
超音波内視鏡(EUS)とMRI・CTの違いについて詳しく見る
それぞれの検査には役割があり、組み合わせることでより正確な評価につながります。
—まとめ
- アルコールと喫煙の見直し
- 血糖値の変化に注意
- 血液検査に加えて画像検査を活用する
最後にひとこと
膵臓は、症状が出にくい一方で、私たちの体を支える重要な臓器です。
そのため、リスクがある方では症状がなくても定期的なチェックが大切になることがあります。
当院では、MRIと超音波内視鏡(EUS)を組み合わせた検査により、膵臓の状態を丁寧に評価しています。
膵臓の異常が気になる方、IPMN・膵嚢胞を指摘された方へ
血糖値の変化や体重変化が気になる方、
健診で膵嚢胞やIPMNを指摘された方は、一度ご相談ください。
当院では、超音波内視鏡(EUS)やMRIを組み合わせ、膵臓の状態を丁寧に評価しています。
超音波内視鏡(EUS)年間430件(2025年)・累計2000件(2026年2月時点)の検査実績をもとに診療を行っています。
参考文献
膵癌診療ガイドライン改訂委員会編.膵癌診療ガイドライン2025年版.金原出版.