【症例】糖尿病悪化をきっかけに発見された極めて早期の膵がん(3mm・ステージIa)|膵管拡張とEUSの重要性|みゆき消化器内視鏡クリニック|多摩市永山の消化器内科・内視鏡検査

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MRIと超音波内視鏡による膵がんドック

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【症例】糖尿病悪化をきっかけに発見された極めて早期の膵がん(3mm・ステージIa)|膵管拡張とEUSの重要性

【症例】糖尿病悪化をきっかけに発見された極めて早期の膵がん(3mm・ステージIa)|膵管拡張とEUSの重要性|みゆき消化器内視鏡クリニック|多摩市永山の消化器内科・内視鏡検査

2024年2月23日

糖尿病が急に悪化した場合、その背景に膵臓の病気が隠れていることがあります。

今回ご紹介するのは、 糖尿病のコントロール悪化をきっかけに検査を行い、早期の膵がん(ステージ1)が見つかった症例です。

膵がんは「症状が出にくい」と言われていますが、 実はこのようにわずかな変化が発見のきっかけになることもあります。

症例

80代の男性の方です。糖尿病で他院通院中でした。

糖尿病が悪化(HbA1c 7.4→8.6)したため腹部CTを行ったところ、膵臓の萎縮と膵管の拡張を認めました。

膵臓の萎縮と膵管拡張を示す腹部CT画像

腹部CT:膵臓の萎縮と膵管拡張を認めます

このような 膵管拡張 は、膵臓の異常のサインである可能性があり、原因を詳しく調べることが大切です。

さらに腹部MRI(MRCP)では、膵尾部で膵管の狭窄を認め、その尾側で膵管が拡張していました。

膵尾部の膵管狭窄と尾側膵管拡張を示すMRCP画像

MRCP:膵尾部で膵管狭窄を認め、その尾側で膵管が拡張しています

腹部CT、MRIともに、膵臓に明らかな腫瘤を指摘できませんでしたが、超音波内視鏡検査目的に当院を紹介受診されました。

このように、CTやMRIで明らかな腫瘤が確認できない場合でも、 超音波内視鏡(EUS)とMRI・CTの違い を理解しておくことで、次にどの検査が適しているかを考えやすくなります。

超音波内視鏡(EUS)で小さな病変を確認

超音波内視鏡検査を行ったところ、膵尾部の膵管が細くなっているあたりに、淡い低エコー領域を認めました(6×8mm)。

EUSで確認された膵尾部の低エコー領域

EUS:膵尾部の膵管狭窄部付近に淡い低エコー領域を認めました

別角度から確認したEUS画像

EUS:別角度からも同様の所見を確認しました

この所見から膵癌が疑われるため、さらなる精密検査として内視鏡的膵管造影および膵液細胞診を勧めました。

膵管造影で膵管途絶を確認

内視鏡的膵管造影では、主膵管が尾部で途絶しており、それより尾側の膵管は描出されませんでした。

主膵管の途絶を示す膵管造影画像

膵管造影:主膵管が膵尾部で途絶していました

膵管造影に引き続いて、膵管内に細いチューブを留置し、数日間、膵液を採取しました(連続膵液細胞診:SPACE)。

連続膵液細胞診のための膵管内チューブ留置画像

膵管内にチューブを留置し、連続膵液細胞診(SPACE)を行いました

採取した膵液の細胞診でがん細胞が認められたため、手術となりました。

切除した膵臓の病理検査では、大きさ3mmの膵癌でした(膵癌のステージIa)。

このように、CTやMRIで明らかな腫瘤が指摘できない場合でも、膵管拡張や膵管狭窄を手がかりに、超音波内視鏡(EUS)や膵液細胞診を行うことで、極めて早期の膵癌が見つかることがあります。

早期膵がんとは

膵がんは一般的に予後が厳しいがんとして知られていますが、 ごく早い段階で発見された場合には、長期生存が期待できるケースもあります。

一般的に「早期がん」とは、治療後の再発リスクが低く、5年生存率が90%以上のがんを指します。 胃がんや大腸がんでは、このようながんが「早期がん」として定義されています。

一方で、膵がんには明確な「早期がん」の定義はありません。

その理由の一つとして、非常に早い段階で発見される膵がんの症例が少なく、その特徴が十分にわかっていなかったことが挙げられます。

小さな膵がんは予後が良いことがわかってきています

日本膵臓学会の報告では、膵がんの大きさが10mm以下で、リンパ節転移や遠隔転移がない場合、 5年生存率は約80%とされています。

さらに、日本の14施設によるステージ0・1の約200例の解析では、 大きさ9mm以下の膵がんでは10年生存率が90%以上と報告されています。

このことから、

大きさ9〜10mm以下で転移のない膵がんは、「早期膵がん」と考えられる可能性があります。

しかし、小さな膵がんはほとんど見つからない

一方で、実際には10mm以下で発見される膵がんは全体の5%未満とされており、 このような小さな膵がんを見つけることは容易ではありません。

特に、

  • CTやMRIでは腫瘤として明確に描出されない
  • 症状がほとんどない

といった理由から、発見が遅れることが少なくありません。

① 早期膵がんの症状

ステージ0または1の早期の段階で発見される膵がんの多くは、自覚症状がありません。

また腹痛や背部痛などの症状があっても、他の病気の症状と似ており、 初期の段階で膵がんを疑うことは難しい とされています。

このように、膵がんは症状から早期に気づくことが難しいため、 どのような変化が早期発見の手がかりになるのか を知っておくことが重要です。

実際には、多くの早期膵がんは「今月の1例」のように、 たまたま行った画像検査をきっかけに発見されることが多い とされています。

② 画像検査

膵がんは膵管から発生するため、目で見えるような腫瘤になる前に、膵管に変化をきたします。

具体的には、がんのある部位での膵管の狭窄(細くなる)と、狭窄部より尾側(上流)の膵管拡張です。

膵がんは膵管の中で発生するため、まず膵液の流れに変化が起こります。

膵管狭窄と膵管拡張のメカニズム図

膵管が途中で狭くなると、膵液の流れが滞り、上流側の膵管が拡張します

このような 膵管拡張 は、早期膵がんを疑う重要なサインの一つであり、見逃さずに精密検査につなげることが大切です。

画像検査では、この「膵管拡張」を認識しやすく、早期膵がん発見のポイントとして重要です。

膵臓の画像検査としては、腹部超音波、CT、MRI、超音波内視鏡、そして内視鏡的膵管造影などがあります。

腹部超音波、CT、MRIは、膵管拡張を捉えるのに有用です。

しかし、早期膵がんでは腫瘤そのものがまだ非常に小さいため、これらの検査で明らかな腫瘤として認識できないことがあります。

つまり、CTやMRIで膵がんそのものが見えないからといって、早期膵がんを否定することはできません。

このような場合には、 超音波内視鏡(EUS)とMRI・CTの違い を理解した上で、次にどの検査が適しているかを考えることが重要です。

一方、超音波内視鏡検査は腫瘤の発見に優れており、CTやMRIで見えないような小さな病変でも認識できることがあります。

また、超音波内視鏡検査で腫瘤を認めた場合には、針を刺して細胞を採取し、確定診断につなげることが可能です。

さらに近年では、超音波内視鏡検査で膵管の狭窄部位付近に低エコーな部分を認めた場合、超早期の膵がん(ステージ0)の可能性があり、内視鏡的膵管造影検査や膵液細胞診を検討すべきとされています。

③ 細胞診検査

各種画像検査で早期膵がんが疑われても、細胞診によるがんの確定診断が付かなければ、外科的手術に踏みきるのは慎重になります。

特に膵頭部の手術は、お腹の手術の中でも非常に大きな手術です。そのため、「手術をしたが、がんではなかった」という事態は、可能な限り避ける必要があります。

膵がんの細胞診検査としては、超音波内視鏡ガイド下穿刺細胞診(EUS-FNA)と膵液細胞診があります。

EUS-FNAは、超音波内視鏡で観察しながら膵臓の腫瘍に細い針を刺して、細胞を採取する方法です。

膵がんの確定診断に非常に有用な検査であり、安全性も高いとされています。

実際には、超音波内視鏡で病変を確認しながら、細い針を正確に病変へ刺入します。

超音波内視鏡下穿刺細胞診(EUS-FNA)で膵腫瘍に針を刺して細胞を採取する様子

超音波内視鏡で観察しながら、細い針を用いて腫瘍から細胞を採取します

このように、EUS-FNAは膵がんの確定診断において非常に重要な役割を果たします。

ただし、超音波内視鏡検査で腫瘍が確認できなければ、細胞を採取することはできません。

一方、 膵液細胞診 は、内視鏡と透視(レントゲン)を用いて膵管内に細いチューブを挿入し、膵液を採取して調べる検査です。

特に、膵臓に腫瘤がなく、がんが膵管内にとどまっている超早期の段階(ステージ0)の診断に有用です。

ただし、この検査には一定のリスクがあり、検査後に急性膵炎を発症する可能性があります(約10%)。

急性膵炎は重症化することもあるため、その適応は慎重に判断する必要があります。

通常は、手術を決める上で膵液細胞診が不可欠と考えられる場合に限って行われます。

よくあるご質問(FAQ)

Q. 膵がんは症状がなくても見つかることはありますか?

A. はい、多くの早期膵がんは自覚症状がない状態で見つかります。糖尿病の悪化や膵管拡張など、検査で偶然見つかるケースが少なくありません。

Q. 膵管拡張を指摘された場合、必ず精密検査が必要ですか?

A. すべてが膵がんとは限りませんが、膵管拡張は重要なサインの一つです。原因を確認するために、必要に応じて精密検査が検討されます。

Q. CTやMRIで異常がなければ安心してよいですか?

A. 早期膵がんは小さいため、CTやMRIで明確に描出されないことがあります。そのため、膵管の変化などがある場合には追加の検査が必要になることがあります。

Q. 超音波内視鏡(EUS)はどのような場合に行われますか?

A. CTやMRIで異常がはっきりしない場合や、膵管拡張・膵管狭窄などの所見がある場合に、より詳しく調べる目的で行われます。

Q. 膵がんを早期に見つけるために大切なことは何ですか?

A. 症状だけに頼らず、糖尿病の変化や膵管拡張などのサインを見逃さず、必要に応じて適切な画像検査を受けることが重要です。

まとめ

  • 早期膵がんは「大きさ9mm以下」の可能性がある
  • 早期膵がんの診断は容易ではない
  • 膵管拡張は早期膵がんのサインとなることがあり、精密検査が重要
  • 超音波内視鏡(EUS)は早期膵がんの診断に有用

糖尿病の悪化や膵管拡張を指摘された方へ

糖尿病が急に悪化した方や、健診・画像検査で膵管拡張を指摘された方は、
膵臓の精密検査が必要となる場合があります。

本症例のように、CTやMRIで明らかな腫瘤が見えなくても、
超音波内視鏡(EUS)によって早期の膵がんが見つかることがあります。

気になる所見がある方は、一度ご相談ください。

超音波内視鏡(EUS)年間430件(2025年)・累計2000件(2026年2月時点)の検査実績をもとに診療を行っています。

参考文献

膵癌診療ガイドライン改訂委員会編.膵癌診療ガイドライン2022年版.金原出版.

Egawa S, et al. Pancreas 2012; 41:985-92.

Kanno A, et al. Pancreatology 2018; 18:61-7.

Izumi Y, et al. Endosc Int Open 2019; 7:E585-93.

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