消化器内科・内視鏡科
- 多摩市連光寺1-8-3
- 042-372-4853
院長コラム
COLUMN
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<症例1:70代の男性>
胃のあたりの痛み(上腹部痛)と熱で、当院を受診されました。受診の約3か月前にも同様の症状がありましたが、自然におさまったそうです。
診察時には痛みは良くなっていました。しかし尿の色が紅茶のように濃いとのことで、念の為、血液検査をしました。
翌朝、血液検査の結果を確認しますと…
肝胆道系酵素(GOT、GPT、アルカリフォスファターゼ、γGTP)と黄疸の指数(総ビリルビン)が、異常高値でした。
すぐに患者さんに連絡をとり、翌日、超音波内視鏡検査を行いました。
超音波内視鏡検査では、予想通り総胆管(胆汁の通る管)の中に1cm大の石を認めました。
検査後、そのまま近隣の総合病院を受診していただきました。
同日、緊急入院となり、内視鏡で総胆管結石を除去していただきました。
内視鏡的治療の翌日には、無事退院されました。
<症例2:76歳女性>
胃のあたりの痛み(上腹部痛)があり、尿も濃くなってきたため、当院を受診されました。
血液検査をしますと、
症例1と同様に、肝胆道系酵素と総ビリルビンが異常高値でした。また炎症のマーカー(白血球数、CRP)も増えていました。
すみやかに超音波内視鏡検査を行いました。
総胆管の中に9mmの結石を認めました。
近隣の病院に緊急入院となり、内視鏡的に総胆管結石を除去していただきました。
<症例3:24歳女性>
胃のあたりの痛み(上腹部痛)があり、当院受診。血液検査の結果は、
総胆管結石を疑って、超音波内視鏡検査を行いました。
総胆管内に7mmと4mmの結石を認めました。また胆嚢内にも多数の結石を認めました。
近隣の病院に緊急入院。総胆管結石を内視鏡的に除去したのち、腹腔鏡で胆嚢を摘出していただきました。
<総胆管結石症の解説>
胆石症は、石のある場所によって、①胆嚢結石、②総胆管結石、③肝内結石、に分かれます。
総胆管結石とは、総胆管(胆汁の流れる管)にある石です。
胆嚢内の石が胆管に落ちてきた場合(落下結石)と、胆管の中でつくられた石(原発結石)があります。
総胆管の太さは5-7mm程度です。そのため、総胆管内に石があると胆汁の流れが悪くなり、腹痛や発熱などの症状が出やすいです。
また胆管内にたまった胆汁が血液に逆流すると、尿の色が紅茶のように濃くなります(外見が黄色くなったのに気づく前に、尿の色の変化がみられます)。
腹痛、発熱、黄疸の3つの症状がある場合、急性胆管炎の可能性があります。
急性胆管炎は、速やかに治療(胆道ドレナージなど)をしないと、命にかかわることがあります。
さらに総胆管結石は、急性膵炎を起こすことがあります。急性膵炎の症状としては、強い上腹部痛、背部痛、悪心・嘔吐などがあります。
血液検査
肝臓(GOT、GTP、LDH)や胆管(ALP、γGTP)の酵素が上がります。黄疸の指数(ビリルビン)が高くなることもあります。
急性膵炎を起こした場合、膵臓の消化酵素(アミラーゼやリパーゼなど)が高くなります。
画像検査
腹部超音波(エコー)、CT、MRI、超音波内視鏡検査などがあります。
この中でも超音波内視鏡検査が、総胆管結石の診断に優れています。特にCTやMRIで発見できないような小さな石でも、超音波内視鏡で発見することができます(Kondo S, et al. Eur J Radiol. 2005;54:271-5)。
内視鏡的治療と外科的治療(開腹または腹腔鏡)があります。日本では、今回の症例のように内視鏡的に治療することがほとんどです。
総胆管結石は、無症状でも将来的に急性胆管炎や急性膵炎などを起こす危険性があります。そのため、たとえ症状がなくても、治療することが勧められています(胆石症診療ガイドライン2021)。
なお胆石症については、病気事典[家庭の医学]で解説していますので、ご参考ください
(https://medical.itp.ne.jp/byouki/180610000/)。