消化器内科・内視鏡科
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院長コラム
COLUMN
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膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は、膵嚢胞性疾患のなかでもっとも頻度が多いものです。
日本の施設からは、偶然に発見された膵嚢胞の65%がIPMN、という報告もあります。
IPMNの最も重要な問題点は、この腫瘍が膵がんの前駆病変(将来的にがんになる可能性のある病変)であることです。
ただし、すべてのIPMNが必ずがんになるわけではありません。
目次
IPMNのがん化リスクは、そのタイプによって大きく異なります:
分枝型IPMNの多くが切除されていないことを考えると、分枝型IPMNの悪性化頻度はさらに低いと考えられます。
日本の研究によると、経過観察中に分枝型IPMNががん化した頻度は3.4〜4.8%であり、これは年率にすると約0.7%になります。
つまり、分枝型IPMNを持つ100人の患者さんのうち、年間約0.7人ががんを発症するという計算になります。。
IPMNに関連する膵がんには、以下の2つのタイプがあることが分かっています。
海外では、IPMNの悪性化といえば、ほぼ全てIPMN由来膵がんを指します。IPMN併存膵がんについては、あまり注目されていません。
一方、日本においては、1997年に初めてIPMN併存膵がんの報告(山口先生ら)がされて以来、注目されています。
日本におけるIPMN由来膵がんとIPMN併存膵がんの割合は、ほぼ同じとされています。
日本と海外でのこの頻度の差が、認識や診断能のちがいよるのか、人種差によるのものなのかは明らかではありません。
しかし、近年では米国からもIPMN併存膵がんの報告が出てきています(https://miyuki-cl.com/blog/論文紹介:米国における分枝型膵管内乳頭粘液性/)。
IPMN由来膵がんとは、IPMNそのもの(嚢胞)が悪性化して、膵がんになるタイプです。
つまり、良性のIPMNが徐々に性質を変化させ、がん細胞へと進展していくものです。
IPMN由来膵がんの特徴は:
IPMN併存膵がんとは、IPMN(嚢胞)とは別の場所に通常の膵がんが発生するタイプです。
IPMNがある場合は、膵ぞう全体が膵がんを発生しやすい状態にあると考えられています。
IPMN併存膵がんの特徴は:
IPMN併存膵がんついては、当院の症例もご参考ください。https://miyuki-cl.com/blog/今月の1例:膵管内乳頭粘液性腫瘍(ipmn)併存膵が/
A・様々な悪性化の危険因子が明らかになっています。
IPMNの国際診療ガイドラインには、どのようなIPMN患者さんが悪性化しやすいか、すなわち悪性化予測因子が記載されています。
これは明確な記載はないものの、「IPMN由来膵がん」を対象とした因子と考えられます。
国際ガイドラインでは、悪性化の予測の強さによって、「悪性化の危険性が高い因子」と「悪性化が懸念される所見」に分類しています。
これらの因子の有無で、手術適応や経過観察間隔などが提案されています。
A・現時点では、よく分かっていません。
上で述べたように、どのようなIPMN患者さんがIPMN由来膵がんになりやすいのかは、ある程度わかってきています。
しかしながら、IPMN併存膵がんについては、その危険因子が明らかではありません。
IPMN(嚢胞)の大きさを例にすると、嚢胞が大きくなるにつれてIPMN由来がんのリスクが高くなります。
一方、IPMN併存膵がんは嚢胞の大きさとは関係なく発生し、1cm未満の嚢胞でも膵がんができることがあります。
しかも、IPMN由来膵がんと比べて、IPMN併存膵がんは進行したステージで発見されることがあります。
IPMN併存膵がんの怖いところは、定期的にIPMNをフォローしていても、突如として膵がんが現れ、その時にはすでに手術ができない状況があることです。
例えば、日本のIPMNを専門としている施設が半年毎にIPMNをフォローしていても、併存膵がんの34%は手術ができない段階での発見でした。
日本のIPMNを専門に診ている医師は、IPMN由来膵がんよりもIPMN併存膵がんが怖いことを、強く認識しています。
残念ながら、新しい国際診療ガイドラインでは、IPMN併存膵がんについての記載は十分ではありません。
その理由として、国際的にはIPMN併存膵がんの認識・知識が乏しいこと、日本においてもIPMN併存膵がんのデーターが不十分なこと、などが考えられます。
IPMN併存膵がんの十分なエビデンスが出るまでは、嚢胞の大きさに関わらず定期的なフォローが望ましい、と個人的には考えています。
注:本コラムの内容は、2025年2月4日時点での見解です。
<参考文献>
Tanaka S, et al. Pancreas 2024;53:e9-e15.
Yamaguchi K, et al. Int J Pancreatol 1997;22:227-31.
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Assawasirisin C, et al. Ann Surg. 2025;281:154-60.