消化器内科・内視鏡科
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院長コラム
COLUMN
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膵がんで最も多い症状は何でしょう?
正解は、腹痛(とくに上腹部の痛み)です。
膵がんの方の約80%で腹痛の訴えがあり、約25%の方は膵がん診断の半年前から腹部になんらかの違和感を感じています。
このコラムでは、その上腹部痛について説明します。
膵がんのその他の症状につきましては、別コラムをご参考ください(https://miyuki-cl.com/blog/膵がんの症状①/)。
膵臓は胃の裏側にあるため、膵がんでは上腹部(みぞおちのあたり)に痛みを感じます。そのため患者さんは、「胃のあたりが痛い」、と訴えて受診することが多いです。
この「胃のあたりが痛い」という症状(訴え)が、膵がんの早期診断を難しくしている一因です。
内科クリニックなどに上腹部痛で来院される患者さんのほとんどは、胃の病気(胃炎、胃十二指腸潰瘍、まれに胃がん)が原因です。膵がんであることは、とても稀です(1つのクリニックに、恐らく1年間に数人もいないでしょう)。
ですので、いろんな病気の患者さんを診ているクリニックの医師(私も含めて)は、「上腹部痛=胃が原因かも」、とまず考えます。
<シーン1>
通常、上のような流れになることはないです(よほどの名医に当たるか、膵臓外来を受診していれば別ですが)。
<シーン2>
(その2週間後)
(その2週間後に胃カメラを受ける)
(さらに2ヶ月後、別の医療機関を受診)
後日、腹部MRI検査で膵体部に腫瘍が見つかる。超音波内視鏡下穿刺細胞診で膵がんと診断されたが、手術の適応がなく、抗がん剤治療が開始になった。
上記のやりとりは、もちろんフィクションです。しかし、膵がんの患者さんを多く診ている医師にとっては、決して珍しくない流れです。
それでは、どのような場合に膵がんによる上腹部痛を疑うのでしょうか。
私は、以下の項目から総合的に判断して、膵臓の精密検査(MRIや超音波内視鏡など)を行うようにしています。
<膵がんによる上腹部痛を疑うチェックポイント>
✅1ヶ月以上、痛みが続く
✅胃カメラで大きな異常がない
✅胃薬を飲んでも良くならない
✅年齢が50歳以上である
✅急激に体重が減っている
✅背中が痛む
✅血液検査で、膵酵素や肝機能の異常がある
✅尿が濃い(紅茶色)、便の色が薄い、白目の部分が黄色い
✅膵がんの危険因子がある(膵がん家族歴、膵のう胞、糖尿病、など)
(*膵がんの危険因子については、別コラムをご参照くださいhttps://miyuki-cl.com/blog/膵がんの危険因子:どのような人が膵がんになり/)
そもそも医師が、「上腹部痛=膵臓が原因かも」、という意識がない限り、膵臓の検査はしません。
上記の項目が当てはまる場合、膵臓が原因の可能性がないか、主治医に相談されてはいかがでしょう。